インディーズ、楽しい、いい音楽
音楽好きで自らバンドもやっている葉宛青は、アーティストらしいロマンを抱いている。会社の理念は、インディーズ、楽しい、いい音楽というものだ。彼女にとっては、いい音楽よりも楽しいことの方が大切で、発行も代理もコンサート開催も、すべては楽しいからやる。ずっと家や銀行からの借金で資金を回してきて、自分は直感で経営しているという。「事業ということなど考えずに開始し、直感で経営していて、精神力だけでここまでやってきました」
確かに小白兎の事業の重点は常に変化している。葉宛青は、インディーズレーベルは台湾のバンドのアルバムを発行すべきだと考えている。2008年には4組のアーティストと契約し、彼らのマネジメントに力を注いだ。その一人、女性歌手の鄭宜農は力を伸ばし、小白兎はそのファーストアルバム『海王星』を発行した。
しかし、アーティストの成功で、葉宛青は事業の転換を考えなければならなくなった。鄭宜農のマネジメントを中心に据えれば、芸能関係の人脈も作らなければならず、それまで楽しくやっていた音楽イベント主催などを停止しなければならない。考えた末、彼女はやはりアーティストのマネジメントはやらないことにした。今ではアルバムの発行はひとつのバンドにつき代表作となる作品1枚を目標にしている。「代表作を作るバンドに対しては、一定の段階に達するまでサポートし、そのあとは自分たちでやってもらいます。マネジメントはやりません」と言う。
小白兎がアルバムを出すバンドの条件はと問うと、笑いながら感覚だけだと答える。小白兎はインディーズレーベルなので、方向性はたくさんあると葉宛青は考える。レコードショップの経営だけに専念してもいいが、それでも音楽活動やアルバム発行を行なうのは、やはり彼女を強く引き付けるバンドがあるからだ。音楽は非常に主観的なもので、まずは自分がおもしろいと思えるものにこそ将来性があると考える。
インディーズの各種音楽を集めた小白兎レコードは、都会のオアシスのように音楽に対する人々の渇きをいやしてくれる。