現地のパートナーと活動
Glocal Actionのサイトを開くと、「グローバル思考、ローカル行動」と大きく書かれている。これまでの国際援助モデルから転換し、Glocal Actionでは現地のパートナーとの共同活動を選択していた。そこで2015年にはタイで集落の教員養成計画を実施したが、これはGlocal Actionと現地の子ども支援団体であるTak Border Child Assistance Foundation (TBCAF)とが共同で推進したものである。
頼樹盛によると、国境には支援を必要とする難民が数多いのだが、付近一帯にはミャンマーからの移住労働者もいるし、山地の少数民族も支援を待っている。今回Glocal Actionが援助するのは、タイ辺境山岳地帯のカレン族集落である。
Glocal Actionが支援する三カ所の小学校は僻地にあり、以前は車も通行できず、学校も教師も欠いていた。中年以上の村人は教育を受けておらず、若い世代は山を下りて学校に行けるのだが、あちこちで差別の対象となっていた。社会に溶け込むために、カレン族の若者は民族の言葉を捨て、山での生活を忘れ、故郷のすべてを消し去ろうとしていた。それは、かつての台湾先住民の境遇にも似ていた。
1990年代になって、タイ政府もようやく辺境の教育問題を重視し始め、山地に分校を設置した。しかし、集落の伝統文化が教育上最大の問題となった。「山に来た教師は言葉も伝統文化も知らなかったので、教えようがなかったのです」と頼樹盛は言う。現地の言葉が分からない教師は一般教材で授業を進めたため子供たちはタイ語を習得したものの、民族の言葉を忘れてしまった。
伝統文化の消失を目の当りにして、カレン族のリーダーPi Watiは2005年にTBCAFを設立し、カレン族の若者と力を合わせて生活改善と児童教育に努め始めた。国際援助計画で頼樹盛と旧知の間柄だったPi Watiは、今年 Glocal Actionと共同で教員養成計画を実施し、またGlocal Actionより資金援助を受けて、三つの集落に小学校教師を招聘することになった。
教育を受けたカレン族の青年は、伝統文化を知っているため、橋渡し役にうってつけである。20歳になるWannaree Wanaweerakitは3年前に故郷に戻ることを選択した。彼女はTBCAFの援助を受けて、平地の技術学校に進学し、卒業後は就職していたが、2012年に故郷に戻って教職に就くことにしたのだという。
集落の教員養成に加えて、TBCAFでは定期的に集落の若い教師を集めて研修を行っている。2015年11月に終了した研修課程には9校から教師12人が参加した。Glocal Actionでは、現地に駐在する実習生・廖元瑜を定期的に視察に派遣しているが、それ以外はすべて地元のパートナーが担当している。「自身の力で境遇を改善してほしいのです」と頼樹盛は言う。
登校してきた集落の子供たちは、国旗を掲揚して仏教の歌を歌い、仏像に礼拝してから一日の勉強を始める。