小衆の声を集める
5年前の草創期、このビジネスモデルを説明すると、「コンテンツのためにお金を払う人が本当にいるのか」と多くの人が疑問を呈した。「でも今は疑問を持つ人も少なくなりました。こうしたモデルはかなり成熟してきました」と言う。
特に読者が分衆化している時代、方格子は小衆向けライターのニーズに応えられる。編集部による繁雑な工程を経ることなく、執筆者は何の制限もなく書き上げた文章をすぐにアップでき、直接読者と向き合うことができるのだ。読者も数百元を払えば最新の記事が読める。ライターは自らテーマと購読料を決められ、購読者が数百人まで増えれば、それは従来の本の出版による収入より多いものとなる。
「方格子に上がっている文章は、ややラフで生き生きとしていて、観点もおもしろいものが多いのです」と翁子騏は言う。
多くの読者が見込めるビジネスやテクノロジー、ファイナンスなどの報道とは別に、例えばタイの風俗営業観察、軍事兵器研究、さらには離婚や不倫などの個人的な経験談など、従来の出版業では扱われなかった題材が、オンラインでは予想外の購読者を集めることもある。この点について「従来の出版モデルでは、最少印刷部数を考慮しなければならず、固定費もかかります。こうした不必要な生産コストの『中心を取り去る』方法を採れば、小衆向けの、特殊なテーマを扱うライターは活躍の大きな場が得られるのです」と翁子騏は説明する。
「だからと言って出版社が不要になったわけではありません。私たちは産業の川上にあり、出版社はここでポテンシャルの高いライターを見出すことができるのです」と翁子騏は強調する。さまざまな声が飛び交う時代、彼らはそのニーズに合った発言の場を提供しているのである。