女子の八家将
2009年、八家将のメンバーによる薬物使用や喧嘩などのニュースが紙面をにぎわせ、多くの親が子供が陣頭に加わるのを嫌がるようになった。
八家将には不良が多いというイメージを払拭するため、早くから改革に取り組みたいと考えていた方宗寅は、舞踊学科の教員に協力を依頼し、女子の八家将チームを作った。
女子八家将は、従来の八家将の役柄や、五行、八卦の陣形を残しつつ、舞踊と武術のステップを取り入れて、剛柔の両面を表現している。従来の八家将が行進する時には、木製の打楽器や銅鑼の伴奏が入るが、女子の場合はロック風の黄俊雄布袋戯(台湾伝統の人形劇)の音楽を取り入れ、演技の効果を高めている。
しかし、八家将は陣頭の中でもタブーやルールが最も多い宗教的芸陣だ。例えば、女性が加わってはならない、顔の隈取を入れた後は話をしたり食事をしたりしてはならないといった禁忌がある。林茂賢によると、伝統の陣頭は女性の参加を認めないが、それは性差別ではなく「陰陽の別」の原理に基づいているという。しかし、世の中が変わるにつれて多くのタブーも少しずつ打破されてきた。女子の八家将が誕生しただけでなく、神輿の練り歩きの報馬仔(神の巡行の先頭に立って道を開き、神輿の到来を告げる役割)や、普渡送孤(無縁仏の供養)の跳鍾馗なども女性が担当するケースが出てきている。
しかしタブーを犯さないよう、振宗芸術団の女子八家将は隈取りを顔の半分にしか入れない。「半分は家将の隈取り、半分は女性の顔で、宗教的な巡行には参加せず、民俗芸陣としてパフォーマンスだけを行なうようにしています」と方振寅は言う。
女子八家将が初めて高雄左営万年フェスティバルで技芸を披露した時には、その華麗な衣装や、力強く美しい姿が観客やメディアに注目されたが、やはり伝統ある廟の長老や、伝統の祭典を扱うウェブサイトなどでは、タブーを犯していると批判された。
こうした批判を受けつつ、冷静な方宗寅は2010年、女子八家将を率いて日本の横浜中華街で技芸を披露し、さらにNHKに招かれてスタジオに出演したところ日本で大評判になった。続く2011年、女子八家将は内門宋江陣コンクールで第一位に輝いた。この時から、国内の多くの廟から出演を依頼されるようになり、活躍の場は街頭から廟の広場へ、また国内から海外へと広がり、シドニーやブリスベン、ハワイなどでも交流活動を行なっている。そして彼女たちの物語は2022年、中華電視によってドラマ化され「神将少女八家将」として放送された。
「官将首」の「増将軍」は人間の世を視察して善悪を見抜き、善人の寿命を延ばす。