デジタル化への誤解
デジタル化は止まらないが、教育クラウド構築と同時に不安の声も上がる。近視の子供が増えないか、インターネットにのめりこまないか、デジタルギャップで親子関係が遠のかないか。多くの教師が「教育革命」に誤解と迷いを抱く。
誤解1:eラーニングは教師と保護者の地位を下げる?
モバイルデバイスで情報収集が便利かつスピーディになったことは、壇上の講師にとって脅威である。家庭におけるeラーニングに関心を寄せる新匯流基金会執行長・李学文は、いまや壇上で講演すれば下では聴衆が手に手にiPhoneやiPadを持って、言い間違えようものならすぐに訂正されるという。
学園のeラーニングは教師の地位を危うくするわけではないが、デジタル能力が自分に勝る生徒を相手に、危機感を感じる教師がいるのも無理はない。ことに流行のコミュニティサイトは年齢の距離がなく、生徒・教師・保護者が皆「友達」だったりする。米国の専門家は、教師が生徒と保護者と距離を保つよう勧める。インターネットは予期しない面を暴露する可能性がある。私生活や振る舞いなど、保護者が期待する教師とのイメージ差で、教師への信頼が損なわれるかもしれないからだ。
「師弟関係のフェイスブック化」はさておき、モバイルラーニング推進で教師は教材の主導権を失い、指導形態も生徒中心に変らざるを得ない。教師にとって変化は大きい。
「この世代の子供はデジタル『先住民』で、教師は『新住民』に過ぎません」大湖小教務主任・李華隆は、師弟間のデジタルジェネレーションギャップは確かに存在するという。
「学ばなければ子供に馬鹿にされます」左営小の張玉芬は、電子教科書の機能は児童が教師に使い方を教えることがあっても、教師の役割と機能が損なわれはしないという。「教師は子供より経験豊富ですから」
「教師には学ばない権利はありません」左営小校長・田福連は、教師のほとんどが同じように思っており、学習・練習し続ける意欲をもってeラーニングツールを活用しているという。
「以前は子供に背を向けて板書していましたが、電子黒板と電子教科書に変ってから向かい合って授業ができるようになりました。先生は楽だし、子供もあくびをしなくなりました」と左営小の林育萱がいう。
「置き換えるよりは融合・併用を考えるべき」大湖小校長・陳素蘭は指摘する。インタラクティブな電子教科書は使いやすく操作も簡単だが、完全に黒板の代りをするのではなく、現段階では共存している。
誤解2:eラーニングは技術のための技術?
電子教科書の提唱当初から、教育界には児童のカバン軽量化の期待があった。だが印刷物の教科書をなくした訳ではなく、教科書とノート端末で児童の負担は増大した。軽くて薄いタブレット端末が登場し、コンテンツが豊富になってやっと電子教科書が再び注目されている。
実際には電子教科書の機能はデジタル化・ペーパーレスに止まらず、指導と学習方法が変ることが鍵である。「ずっとハードウエア的思考でした」新匯流基金会執行長・李学文は、誰でもデバイスを持っているのがeラーニングではなくて、何をどう教えるかこそがeラーニングの成否を左右するという。
誤解3:eラーニングは近視やネット中毒を招く?
保護者が心配する近視だが、実験によると子供の視力は悪化していない。眼科医も児童の近視の原因はただ一つ、距離が近いことだという。電子ブックも印刷物も違いはない。
一方、インターネット中毒はより興味深い問題だろう。インテルのT.K.ティエンは、1990年代生れの子供は校外でパソコンを覚え、家のパソコンは学校のより進んでいたりするという。つまり、のめり込むのはeラーニングのせいではない。
マカオ培正高校が幼稚園・小中高の児童生徒に行ったアンケートでは、子供の8~9割がデジタル製品を知っている・使ったことがある・持っているが、多くはゲームに使っていた。「デバイスを応用した学習を知らないのは非常に残念なことです。これも学校がeラーニングを進めなければならない主因です」と培正高の黄智中は台北世界華人ICT教育イノベーションカンファレンスで語った。
紙のカードやチョークの時代は終わった。大湖小学校の陳宥安先生は電子黒板を用い、書いたり消したり拡大したり移動したり、指一本で操作する。