南シナ海問題は、1982年に国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約)が公布されて以来、常に周辺国家と世界から注目されてきた。しかもこの海域は天然資源が豊富であることから、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア、中国大陸などの間で論争が絶えない。
馬英九総統は「2015年世界国際法学会・米国国際法学会アジア太平洋研究フォーラム」の開会式で祝辞を述べた際、平和と互恵の原則の下で南シナ海をめぐる争議を解決するための「南シナ海平和イニシアチブ」を提唱し、各国が国際法の基礎に立ち、包容和解し、相互協力すべきであると呼びかけた。
馬英九総統は「敵意を消し去り、主権の争議を棚上げすることこそ、平和と繁栄を促進する最良の方法である」と述べた。台湾海峡両岸間の争議や、台湾とフィリピンとの間の漁業問題、また東シナ海海域をめぐる争議も、最終的にはすべて十分なコミュニケーションと平和で理性的な対話メカニズムを通すことで終結させることができると馬英九総統は語った。「東シナ海平和イニシアチブ」とその後に締結した「台日漁業協定」はまさに典型的な事例である。
南シナ海の問題においては、歴史的、地理的、および国際法上も、南沙諸島、西沙諸島、中沙諸島、東沙諸島およびその周辺海域は中華民国の固有の領土および海域であり、我が国が国際法上の権利を有することに疑いをはさむ余地はない。主権は我にあるが、それでも我が国は争議を棚上げし、平和と互恵の精神の下、資源を共同開発するという原則で、他の国々との対話と協力を進めていきたいと考えている。
「今年は第二次世界大戦終結70年周年に当たる。各国は、歴史の教訓をくみ取り、それを平和と繁栄を促す原動力へと変えていくべきである」と馬英九総統は述べ、さらに次のように呼びかけた。各国は自制して地域の平和と安定を維持し、緊張をエスカレートさせるいかなる一方的な措置をも避けるべきである。また、国連憲章および国連海洋法条約などの関連する国際法の原則と精神を尊重し、対話と話し合いをもって争議を解決し、南シナ海地域の海・空域の航行および飛行の自由と安全を守るべきである。関係各方面は主権の争議を棚上げし、資源開発協力メカニズムを構築し、包括的な計画を立て、区域ごとに南シナ海の資源を開発していくべきである。また、南シナ海の環境保全、科学研究、海上犯罪の撲滅、人道援助および災害救援などの課題について協力メカニズムを構築すべきである、と。
最後に馬英九総統は「主権は分割できないが、資源は共有できる」とし、「南シナ海平和イニシアチブ」をもって、重大な衝突が発生する前に、将来を見越した実務的な方法を提示し、南シナ海を「平和と協力の海域」にしたいと語った。
馬英九総統が「南シナ海平和イニシアチブ」を発表すると、アメリカ国務省のジェフ・ラスク報道官は米国時間の5月26日、「南シナ海平和イニシアチブ」について、米国は台湾が関係各方面に自制を求め、地域情勢の緊張を高めるようないかなる一方的な行為をも避け、国連憲章や国連海洋法条約などの国際法を尊重するよう呼び掛けたことを称賛すると述べた。
ここからも分かるとおり、南シナ海平和イニシアチブは国際社会から注目され、高く評価されているのである。