確かな六朝楷書、壮大な行草書
朱振南は書画ともに達者だが、とりわけ行草書を得意とし、彼の作品は台湾の多くの公共スペースや公的機関などで見られる。台北駅の六朝楷書で書かれた「台北車站」や、桃園国際空港、台湾東部鉄道の駅名なども彼の手による。駐バチカン大使の杜筑生が2004年に着任後、ヨハネ‧パウロ二世へ贈ったのも、朱振南の隷書作品『信経』であり、今なおバチカンに飾られている。
桃園空港第1ターミナルの長い廊下には、アーティストの方文山とのコラボ作品『在旅行的路上(旅の道で)』が掲げられている。「旅の道すがら/ゆっくり語る話がある/人の温かい地がある/その名を台湾という」と、生き生きと流れるような見事な行草書だ。
朱振南は書だけでなく風景も描く。台湾の山や海を多く描き、とりわけ玉山への思いは強い。彼の抽象水墨画は、独自のスタイルを成す。線は書道のタッチ、色彩は西洋的で、「水で墨を破り、墨で彩を与え、書で絵を作り、書画を融合する」というのが創作理念だ。詩の趣を持つ水墨画のようで、同時に現代的な輝きを放つ。
ニューヨークのセントラルパークを描いた作品には、スケートを楽しむ人々や、雪景色に黒い枝、そしてこちらに歩いてくる一人の女性が登場する。「この女性は身長172センチ、30~40歳ぐらいで、シャネルのジャケットを着て優雅に歩くというように描きました」頭の中の構図では、さまざまな方向を向く人物がすでにあったが、こちらに向かってくる人物をさらに加えないと絵として完成しない。その挑戦のために、朱振南はワインを飲む必要があったという。
方文山と異分野でコラボした書のライティング作品は空港内で人気の撮影スポットとなった。