外からのリソース
エコツーリズムが始まり、生物多様性の調査や住民による生態ガイドの育成も行なわれ、チームが結成されて、これらの事業は地域の自主運営に託されていく。この地域の成長に寄り添ってきた里山生態公司は、こうして築かれたエコツーリズムの基礎の上に、多様かつ総合的な活動を行ない、機動的に外部からさまざまな分野のリソースや団体を引き入れている。これによって総合的な効果を高め、地域の収入を増やしてこそ生態保護が長続きすると考えている。
例えば、従来のエコツーリズムでは動植物や地形や景観の観察がメインで、文化的要素に関する内容は少なかった。そこで2015年から墾丁国立公園管理処の協力を得て、アーティスト・イン・レジデンスとして各地域に芸術家を招き、1カ月にわたって滞在してもらっている。芸術家が住民と交流することで、その作品が観光客にとっての魅力となる。
例えば里徳地域の公共菜園に入ると、ここに滞在する芸術家の陳錦輝が、浮きや発泡スチロールなど海岸のゴミを用いて制作した作品「風訳(風の翻訳機)」が見える。北東からの季節風が吹く季節、風の力で砂地にさまざまな模様が描かれ、非常に興味深い。
だが、陳錦輝と言えば、住民にとって忘れられないのはこのパブリックアートではなく、彼がきっかけとなって誕生した地域のバンド「浮浪拱楽団」である。「町づくりがおもしろいのは、こういうところです。芸術家と住民の間で、何が飛び出してくるかわかりません」と林志遠は言う。里徳地域は先住民集落で、住民は歌や踊りに長けており、陳錦輝はアフリカの太鼓を演奏する。その両者が砂浜で清掃活動をしていた時、陳は打ち上げられたゴミを打楽器にして演奏を始め、住民に叩き方を教えたのである。そうしてアミ族の古いメロディをアレンジし、住民による浮浪拱楽団が誕生した。
菜園横の東屋には額が掛けられ、「里徳の歌」が書かれている。「里徳の本来の名は猪朥束、後に三集落に分かれ、十八番社の大頭目はこの地の高山族…」と地域の歴史やいわれが記されている。宋仁宗は「これは私が書いた歌詞なんです」と言って笑う。里徳地域を訪れた旅行者は、ゴミを再利用した楽器を使って住民たちが「里徳の歌」を合唱する声を聴けるだろう。生命力にあふれた歌声は、この大地に生きてきた彼らの力を感じさせる。
それだけではない。里徳地域はその自然資源を環境教育に活かし、これまでに環境教育教師を6人育成してきた。彼らは満州郷の役所と地元の4つの学校で環境教育を行なっており、今年は「国家環境教育優等賞」を受賞した。

海風と山からの風にさらされて育つ港口茶は濃厚な香りが特徴だ。