立体映像による医療補助
実際に立体映像が医療に応用されたのは、今に始まることではない。新竹サイエンスパークの国家実験研究院ハイパフォーマンス・コンピューティング・センターでは、2001年から長庚病院、台湾大学病院と協力し、病院が提供したX線写真やCTスキャンやMRI画像などのデータを特殊なソフトで高速計算し、自由に角度を回転できる3D画像に変換していた。
特製の3Dメガネをかけると、患者の体内の神経線維や腫瘍の分布の相対的位置を微細に観察できる。これで手術の失敗を減少できるのはもちろん、教育や術前の手術プラニングにおいても、大きな効果をあげることができる。
ハイパフォーマンス・コンピューティングセンターのソフト技術研究員張宏生によると、3D立体画像は、医者と患者あるいは患者の家族との関係改善にも役立つという。かつて台湾大学病院の脳腫瘍患者のため、立体画像を構築したことがあった。この患者の腫瘍は、ちょうど言語野や論理的思考を司る部位に位置していた。3Dの画像による説明を受けて、患者の家族は当人に起きていた物忘れなどの短期の記憶が失われる現象が、まさに腫瘍が長期的に神経線維を圧迫して変形したためであることを、はっきりと理解できたという。
神経の変形は不可逆的に進行し、手術で腫瘍を切除しても元通りになることはあまりない。むしろ言語能力を失う副作用もありうる。しかし、手術しなければ腫瘍は増殖し、生命に係わるだろう。
「患者と家族にとって、手術を受けるか受けないかの選択はたいへん厳しいものです。しかし立体画像による説明で、医者はよりわかりやすく家族に手術を受けた場合の利害得失を説明できるので、術後の医療訴訟をかなり避けられるでしょう」と張宏生は説明する。
手術の3D実況でも、台湾は進んでいる。工業研究院は今年6月に彰化県の秀伝病院内視鏡手術センターとの2年にわたる研究協力計画を発表した。これによると、当初は既存の内視鏡の2D信号を3D信号に変換して3Dモニターに映し出し、外科の執刀医は手術中でもリアルタイムに2Dと3Dの画像を見られるようになる。
第2段階では局部手術の患部のリアルタイム3D画像とその補助システムを開発するという。外科医が内視鏡手術を行っているときにも、既存の内視鏡2Dスクリーンで操作しながら、3Dスクリーンでリアルタイムに手術部位の立体画像を見ることができる。こうしてより精確に縫合や切開する部位の空間の相対的位置を実感できる。こうした新技術により、2D内視鏡手術のレベルを大幅に向上できる。
衛星画像を3D化すれば、関係機関もより明確に国土の変容を理解できる。写真は昨年の台風8号による土砂災害の前と後。緑に囲まれた小林村は完全に土砂にのみ込まれてしまった。