ゴルフ女子プロの陸冠芝は、最近ヨガラティスを始めた。小さい頃から野球をやっていたため、他の女子プロに比べると体格が大きく、瞬発力に優れ、ドライバーの飛距離が出るのだが、柔軟性に劣る。「筋肉が早くから硬くなったので、ヨガラティスで柔軟性を高めようと思っています」と、彼女は自分の訓練計画を語る。
4月初め、22歳の陸冠芝と余佩琳とは智林公司(エリックス・スポーツ)と契約した。将来3年間、会社は毎年100〜300万台湾ドルの資金を調達し、外国での試合の資金を援助する。
プロに入ったばかりで、経費の援助も重要だが、台北体育学院の卒業を控えた陸冠芝にとって、いかに自分に向いた試合を選択するか、それがプロ選手としてのキャリア形成の鍵になる。
公私共にペア
智林公司の社長、1974年生まれの施宣麟はIMG台湾支店の社長付きとして、スポーツマーケティングとエージェントに5年の経験がある。IMGに勤務していた時から起業を考えていたのだが、ついに父、エイサー・グループ創設者の施振栄のサポートを受けて会社を設立した。開業資金150万台湾ドルに加え、父の幅広い人脈も大きな助けとなる。
創業当初、様々なプロジェクトを企画した。会社の運動会であるとか、企業のスポーツイベントのマーケティング企画などであるが、一番主要なイベントがゴルフのホーププロジェクトだと、施宣麟は話す。
かつて日本で活躍していた涂;阿玉や呂良煥、最近はアメリカのプロ参戦中の林玉萍など、台湾のゴルフプロはしばしば好成績を収めてきた。これが台湾人に向いたスポーツであるためだが、プロゴルファーの成績向上に協力し、国際的なスカウトに存在を知らしめるには、大規模なオープンに参加する必要がある。
施振栄の呼びかけで、このホーププロジェクトには富邦グループ会長の蔡明忠、UMCの名誉副会長の宣明智、ゴルフの名選手謝敏男など、スポーツ界や実業界の賛同を得ることが出来た。この賛助により試合に参加してきた陸冠芝や余佩琳などの選手が次第に頭角を現わしてきて、2006年のドーハのアジア大会団体で銅メダルを獲得してから、今年初めにプロに転向した。
智林公司は援助を募るにも、その人脈を利用しているが、施宣麟のスポーツ市場における経験も欠かせない。
ゴルフが最も盛んなのは、日本、ヨーロッパ、アメリカだが、台湾の選手は日本とアメリカを主としている。アマチュア時代にアメリカで試合をしていた陸冠芝は今後もアメリカを中心に、日本を主としていた余佩琳は同じく日本中心を計画している。
特に陸冠芝のようなドライバーを得意とする選手はアメリカ向きである。ゴルフ場が広いので飛距離の短い選手は不利だし、ウッズが出てから、アメリカのゴルフはパワー時代に入っている。パワーのある陸冠芝をアメリカ中心とするのもそのためだ。
選択が勝負を決める
選手に最適の戦場を選択するのがエージェントの仕事である。しかし、スポーツエージェントの歴史が浅いことから、選手側の理解も浅いと、創悍公司(ブロス・スポーツ)の張哲威は語る。
エージェントの力量を見せるため、張哲威は台湾の野球選手5人にアメリカのプロ契約を締結させたが、決定するまでに少なくとも5チームと面接させた。
2006年2月、台湾体育学院1年生の投手邱子愷;は張哲威とエージェント契約を結んだ。その後、大リーグの6チームが台北に集まり、その投球をテストした。テストの結果、レッドソックス、インディアンズとブルーバーズが興味を示した。
それから家族と、どのチームがいいのか分析した。インディアンズは左投手を欠いており、しかも台湾選手が加入したことはないので、メディアに注目されやすく、その点で有利である。20万米ドルの契約金は一番高いとはいえないが、張哲威は家族にインディアンズを勧めた。
「智林公司が陸冠芝にアメリカツアーを勧めるのも、私が邱子愷;にインディアンズを勧めるのも同じ理由です。いくつか比較してみることで、エージェントは選手に最良の選択を勧めるのが仕事なのです」と張哲威は言う。