食文化は不断に変化し成長する有機体である。台湾では日本時代の中日融合から、1949年には国民政府が中国南北の料理を持ち込み、中華の宴席料理はさらに豊富になっていった。
ミシュランの覆面調査員が台湾に入ってこないうちに、本誌では台北市のレストラン推進計画の実行を担当する中衛発展センターと、グルメ評論家の推薦をもとに、一流とされるレストラン二店をご紹介する。ここから高い評価を維持するための秘訣と中華料理を理解するコツが見えることであろう。

江浙料理の系統に属する淮揚料理は、北方料理の濃厚さに南方料理の素材の旨味を融合させたもので、味はしっかりしていながらあっさりしている。銀翼の看板料理は、左からエビ焼きそば、肴肉(煮凝り)と風鶏、肉団子の醤油煮、白菜と落花生の涼拌、そして文思豆腐。
味覚の記憶を越えて―銀翼
銀翼が選ばれたと聞くと、グルメの中には「何だって。昔に比べれば落ちたものなのに」と言う人もいれば、「古臭い料理ばかりで取り上げることもないだろうに」と言う人もいる。どちらにせよ、子供の頃の味がそこにこめられている。記憶は美化され、時に色褪せるものだが、評論家の目からは銀翼こそ台湾の浙江料理を代表するレストランである。
足を踏み入れると、見に入るのは広い階段に大きな書の額という昔ながらのエントランス、伝統的な料理にベテランのホールスタッフ、悠々と食事をする常連客である。若い客でも、乳離れした頃から、ここの料理を食べていたという懐かしい記憶を手繰れる。
銀翼の名は、空軍の銀の翼の徽章からとったもので、その前身は空軍将校クラブであった。中国にあったとき、空軍将校クラブは杭州筧橋にあり、抗日戦争が起ると、成都に移った。そのため、浙江料理と四川料理が混ざっているのが特色である。国民政府が台湾に移ると、政府は民間と競争しないという原則から、1949年に民営化されたが、シェフからホールスタッフまで同じ陣容で、常連客も国民党、政府、軍要職の外省人を主としていた。
馴染み客と昔ながらのレストランには、食を越えた繋がりが生れる。三代揃ってここで披露宴を挙げた人もあり、また老友との定期的な集まりを開く人もいる。80歳過ぎながら、艶々した顔色の張支配人は、60年前にレジ係から勤め始めた。今では店を開ければ顔を出し、注文を受け、腕を取ってお客を送り出し、時には馴染み客と乾杯する。まるで家族のように、宴席を取り持つ。
2008年、飲食雑誌のレストラン格付で4つ星を受けた。その理由は、浙江料理の流れを汲む淮揚料理の精髄を伝えるというものである。食材を厳選し、包丁捌きが優れ、北方の濃厚な味と南方の素材を生かした調理が融合し、あっさりした中に味が入っていると言われる。
常連客が必ず頼むのが、肴肉と風鶏、煨;麺、小籠包などである。肴肉は豚肉の煮凍りで、千切りショウガと鎮江酢で食べるもので、肉の脂がありながらあっさりしている。煨;麺は鶏スープで麺を煮込み、こくがある。小籠包はしっかりした皮に、蒸篭に敷いた松葉の香りがすがすがしい。
銀翼では古典的な淮揚料理の復元にも力を入れている。300年の歴史を持つ由緒ある料理、文思豆腐は、清朝の揚州天寧寺の文思和尚が考案した庶民的な料理だが、シンプルな豆腐の羹ながら包丁技が試される。千切りにした絹ごし豆腐を浮かせた一品は、乾隆帝の満漢全席にも選ばれた。これを銀翼では、清朝のグルメ本「随園食単」で知られる江南の才子袁枚のレシピにより、鶏スープに千切りの筍と鶏肉を合せ、柔らかくあっさりと仕上げる。
銀翼のもう一つの看板料理が芝エビのおこげで、これにも逸話がある。乾隆帝が江南を訪れたとき、小さな店で食事をした。そこでエビ、鶏肉、鶏スープであんを作り、おこげにかけた料理が出た。おこげのお椀からジュッと音と湯気が立ち上った。乾隆帝は色、味に加え、音と湯気が楽しめるこの料理を天下第一と褒め称えた。
老舗として伝統的な作り方を守っている。それは馴染み客のためでもあるが、徒弟制度の味の伝承のおかげでもある。銀翼の二代目シェフ呉国村は40数年前に弟子入りした。「当時の決りでは、入門して6年8ヶ月経たないと宴席を担当できませんでした」と言う。現在、24人のコックがその下で、切る、炒める、蒸すなどを担当し、系統的に技術を磨いている。
14年とまだベテランとはいえない副支配人の藍隆盛によると、中華レストランでの人材養成は難しい。昔ながらの徒弟制度は今では役に立たず、今年初めて調理学校出身の学生4人を1年の実習に採用した。しかし、伝統の味を守ることが大切で、シェフが休んだ途端に馴染み客から文句が出る。
昔ながらを守る銀翼だが、高い格付けにより新しい客層がついてきた。店の環境やサービスの質がそれについていけるのか、これが客の心をつかむ鍵となるであろう。

江浙料理の系統に属する淮揚料理は、北方料理の濃厚さに南方料理の素材の旨味を融合させたもので、味はしっかりしていながらあっさりしている。銀翼の看板料理は、左からエビ焼きそば、肴肉(煮凝り)と風鶏、肉団子の醤油煮、白菜と落花生の涼拌、そして文思豆腐。
台湾料理の誇り―101食芸軒
2000年5月、陳水扁前総統の就任パーティに、初めて台湾の小皿料理(小吃)が出された。依頼されたヒルトンホテルのシェフは、宴席に向けて小皿料理を改良し、もち米料理の碗粿;も脂っこい豚肉を鶏肉に変えて小ぶりに仕立てて、扁粿;と名づけるなど工夫した。
台湾の小皿料理が宴席に並ぶようになったのは、陳前総統が最初ではない。32年前に台北市双城街に11卓で開店した台湾料理の老舗欣葉は、台湾スタイルの宴席という新しいコンセプトの店である。
このコンセプトは1970年代に遡る。100年前に迪化街の富商が出入りした江山楼や鳳凰閣はすでになく、記憶の中の台湾宴席料理は、田舎の結婚式などに辛うじて残るに過ぎなかった。
小さい頃から料理好きだった李秀英は、台湾料理を宴会にと志し、台湾料理のシェフと宴席料理を出すことにした。
しかし、主流の中国風の好みに合わず、欣葉は一日のお客が二人という惨憺たる創業期を過ごさなければならなかった。その後は切干大根入り玉子焼きやレバー炒めなど、小皿料理を看板に路線変更した。経済発展が始まった1980年代、欣葉のお粥と小皿料理が人気を呼び、低価格の台湾料理の宴席もそれに連れて客がつくようになった。さらにはしゃぶしゃぶ、日本風料理店、カレー店などを開店していった。
2006年、欣葉は台湾料理レストランをシンガポールや北京、日本に開店し、厳選した材料に標準化した調理プロセスを取り入れていった。家業を継いだ李鴻鈞社長は、シェフを連れて外国に視察に出かけ、より洗練されたレストランを目指す。
台北101の85階にあるファッショナブルなレストラン、101食芸軒は、最新の視察の成果を発揮している。台湾料理に食前酒から前菜、メインコース、デザートと続くフレンチのコースを取り入れ、日本風の盛り付けで興趣を添える。
たとえば風華四喜と名づけられた前菜を見ると、カラスミにイクラと明太子寿司などが白い器に盛り付けられ、フレンチの一皿のように美しい。看板料理のレバー炒めでは、選び抜かれた食材に調理法は昔ながらの調味料に漬け込んで蒸す手順を強火で炒めることに変え、醤油と砂糖をからめて水分を飛ばしている。レバーの口当りを残しながら、あっさりと仕上っていて、赤ワインによく合う。
創業30周年を迎える今も、中華鍋を振り続ける李秀英董事長は、シェフの阿南と共同で、欣葉の懐かしの味、新作料理、看板料理の3分野、62種類のレシピを料理本として出版した。欣葉の味のコツが披露されているが、ここにも台湾料理の味を伝えていこうという願いが込められている。

台湾料理の特色
1.素材の味を活かす:他の中華料理が濃厚な味付けであるのに対し、日本料理の影響を受けてあっさり味、素材の味を重視し、塩、油が少ない。
2.豊富なシーフード:海鮮を多用し、冷たい料理や生食もある。
3.強火での炒めを重視:強火で手早く炒めて香りを高めるとともに、食材の味と栄養が失われない。
4.とろみあん、甘酢、漬物:台湾はかつて、中国からの移民の農耕社会であったため、一般に食材をすべてとろみをつけたスープでまとめて一皿にし、手軽にいっぺんに栄養を取れる料理を好んだ。甘酸っぱい料理はご飯が進み、漬物は塩分を補給し、保存食ともなり食材を無駄にしなかった。
(資料:李秀英、陳渭南共著『欣葉心、台菜情』、2007年、賽尚図文出版)

江浙料理の系統に属する淮揚料理は、北方料理の濃厚さに南方料理の素材の旨味を融合させたもので、味はしっかりしていながらあっさりしている。銀翼の看板料理は、左からエビ焼きそば、肴肉(煮凝り)と風鶏、肉団子の醤油煮、白菜と落花生の涼拌、そして文思豆腐。

台湾料理を質の高い宴席料理へと高めることが欣葉の目標である。101食芸軒の看板料理は、左から切干大根入り卵焼き、カラスミ、レバー炒め、イカ団子、そしてワタリガニの鍋。

江浙料理の系統に属する淮揚料理は、北方料理の濃厚さに南方料理の素材の旨味を融合させたもので、味はしっかりしていながらあっさりしている。銀翼の看板料理は、左からエビ焼きそば、肴肉(煮凝り)と風鶏、肉団子の醤油煮、白菜と落花生の涼拌、そして文思豆腐。

江浙料理の系統に属する淮揚料理は、北方料理の濃厚さに南方料理の素材の旨味を融合させたもので、味はしっかりしていながらあっさりしている。銀翼の看板料理は、左からエビ焼きそば、肴肉(煮凝り)と風鶏、肉団子の醤油煮、白菜と落花生の涼拌、そして文思豆腐。

台湾料理を質の高い宴席料理へと高めることが欣葉の目標である。101食芸軒の看板料理は、左から切干大根入り卵焼き、カラスミ、レバー炒め、イカ団子、そしてワタリガニの鍋。

台湾料理を質の高い宴席料理へと高めることが欣葉の目標である。101食芸軒の看板料理は、左から切干大根入り卵焼き、カラスミ、レバー炒め、イカ団子、そしてワタリガニの鍋。

台北101の85階にある欣葉「101食芸軒」は「桃源郷を求めて」をテーマとし、俗世を離れた雰囲気をかもしている。「ビジネスの接待でも、プロポーズの場としても、当店は必ずやお客様のお力になれるでしょう」と百戦錬磨の王秀蘭店長は言う。

台湾料理を質の高い宴席料理へと高めることが欣葉の目標である。101食芸軒の看板料理は、左から切干大根入り卵焼き、カラスミ、レバー炒め、イカ団子、そしてワタリガニの鍋。



台湾料理を質の高い宴席料理へと高めることが欣葉の目標である。101食芸軒の看板料理は、左から切干大根入り卵焼き、カラスミ、レバー炒め、イカ団子、そしてワタリガニの鍋。
