工業に有利、農業には衝撃
ANZTECは25章から成り、いくつかの特色がある。まず、WTOもカバーしていない投資、空運、映像、先住民族、環境などの内容も含まれている。台湾の関税引下げ項目の範囲は99.88%、ニュージーランドは100%に達し、また我が国はニュージーランドによる台湾での外国人学校設立も認めた。
この協定において双方は対等な関係にあり、双方は連合委員会を設けて、将来的に協力可能な項目について継続的に話し合うこととなった。
台湾はニュージーランドにとって12番目に大きな貿易相手国で、10番目に大きな輸出市場、13番目に大きな輸入相手国でもあり、2012年の相互貿易額は12億米ドルを超える。双方ともに経済規模は大きいとは言えず、産業構造には相互補完性があるため、貿易障害が取り除かれても互いの産業が受ける衝撃は限られている。
張家祝・経済相は「農業を除くすべての項目において台湾に有利である」と語っている。中でも工業には最も有利であり、鉄鋼、プラスチック、自動車およびオートバイなどは対ニュージーランド輸出の関税が将来は撤廃される。
中華経済研究院の試算では、ニュージーランドとの貿易が完全に自由化されれば、台湾の農業生産高は全体の1.66%、約50億台湾ドル減少し、主に畜産業が衝撃を受けると見られる。
だが、全体的に見ると、ANZTEC実施から12年後、我が国のGDPは3億300万米ドル増加し、台湾の産業総生産額は356億元成長する見込みで、特に石油化学と電子・光電産業が最も大きな恩恵を受けると見られている。
農畜産業への衝撃を緩和
農業項目では、ニュージーランドのチェリー、リンゴ、豚肉、冷凍野菜など1300余項目の関税は即刻撤廃され、牛肉、牛の内臓、キウイなどは逐年関税を引き下げていく。キウイの場合、現在の輸入関税は20%に達するが、最終的には現在の価格より6分の1下がると見られる。
農業委員会の胡興華・副主任委員によると、我が国は最も敏感な米を対象外としているため、最大の衝撃を受けるのは、乳製品、牛肉、羊肉、鹿の角などである。農業委員会は「輸入による農産物損害救助基金」90億元をもって過渡期に価格競争で不利になる農家を支援するとしている。
胡興華は次のように説明する。台湾とニュージーランドはそれぞれ亜熱帯と寒帯に位置し、農産物品目の相違は大きいため、ANZTEC締結は両国の果物輸出には有利であり、台湾の消費者は今より安くキウイを購入できるようになる。現在、チェリーやリンゴを我が国に輸出している南北アメリカの国々は今後、低価格のニュージーランド産と競争しなければならず、これにより台湾とのFTA(自由貿易協定)締結に意欲が高まる可能性もある。
今後は他国とのFTAへ
FTAは国際貿易の大きな流れである。現在台湾は5ヶ国とFTAを締結しているが、すべて中南米の国々で、我が国の貿易に占める割合は5%に満たず、これを拡大していく必要がある。
ニュージーランドとの貿易交渉は昨年5月18日に始まったばかりで、わずか1年と2ヶ月で調印までこぎつけた。馬英九総統は、双方は非常に高い効率で交渉を進めたと語っている。
ANZTECの成立で、我が国の今後のFTAへの関心が高まっている。中華経済研究院台湾WTOセンターの李淳・副執行長によると、次の締結先はチリかオーストラリアになるという。チリはワインとリンゴで、オーストラリアは牛肉や乳製品でニュージーランドと競争関係にあるため、ANZTECの締結により両国のFTA締結への意欲は高まると見られる。