3憶2000万を募集し、若者を惹きつける
まずは各メディアに自ら露出してネット起業への注目を高めて投資家の関心を引きよせた。2012年にはマネジメント会社の名義で資金を募集、同年、appWorksは正式に運営を開始し、国泰ホールディングス、群聯電子、聯合報グループ、華威グループの四社が出資する本善ベンチャーキャピタルファンドの3.2憶元を運用し始めた。
「資金集めに成功したのは、それまでの2年間で育成した十数のチームがすでにポテンシャルの高い投資対象となっていたからです」と林之晨は言う。
現在、appWorksが投資する16社のうち、数社が利益を上げている。ゲームのPubGame、飲食店予約のEZTABLE、広告プラットフォームのTagtoなどで、各社数百万ずつ投資し、投資総額は1.3憶元になる。
起業家は指導を受けられ、育成者は優先投資権を持つ。ベンチャーキャピタルは投資者と投資対象を結び付け、投資者はビジョンに資金を出す。こうして協同でビジョンを作り上げるモデルが多くの若者を引き寄せ、この起業育成加速器に加わりたいと思うのである。創業から現在まで、育成プログラムはすでに6回にわたる。参加希望の申請書は600余件、採用率は25~30%だ。
アイディアではなく人を選ぶ
では、どのようなチームがappWorksの育成プログラムに参加できるのか。斬新なアイディアやビジネスモデルを持っている必要があるのだろうか。
「私たちが選ぶのはアイディアではなく、人です。申請書に書かれている多くのモデルは、3日目には全否定されてしまい、半年の間に10もアイディアを変えた人もいます」と話す林之晨は、面接の時に次の三点に注目するという。
第一は決意である。「以前のボスに見下されたから、見返してやりたい」「父から出来の悪い子供だと思われている」など、一般の職場ではマイナスとなる考え方も、それが強い決意となれば起業にはプラスになる。起業には3年の忍耐が必要で、強い意志がなければ続かないからだ。
第二は強い実行力である。自分が求める商品を生み出し、パートナーと話し合い、求める人材を会社に集める能力が必要だ。第三は、何らかの産業分野において他者は知らない内幕を知っていることだ。これによりユニークなアイディアが出る。
林之晨は、これら三点を基準にした面接で淘汰された人が、後に自力で起業に成功した事例は今までにないと言い切る。
一方、ベンチャーキャピタルの部分は育成とは全く異なり、重要なのは投資に対するリターンである。「投資のチームでは、最終的に一定の比率で大きな利益を上げなければ成功とは言えません」
自分の力で扉を開ける
appWorksのオフィス入口には、米国の起業家でベストセラー『「紫の牛」を売れ!』の著書セス・ゴーディンの言葉が貼られている。――「社会や教師や親を怨むな。ガッツを出して自分の力であの扉を開けよう」
林之晨は、心の底にある信念の力を信じており、これらの言葉を繰り返し読むことで、初心を貫くことができると言う。そこで「起業は決して孤独ではない」「資金は最も必要な時に注がれる」「投資は売買ではなく、一種の関係だ」といった言葉で若者の加入を呼びかけている。
ネット起業を熱愛し、理想のネット企業がまだ存在しないからこそ、育成と投資を始めたのだ。
「今後数年、ネット起業はさらに盛り上がるでしょうが、2000年のバブルを繰り返してはなりません。現在すでに、クールだから起業したいと考える人が出てきています」と言う。消費者の行動は読めないので、創業者は興奮してはならず、悲観してもいけない。ネット起業の根底には、世界をより良くしたいという思いがあるべきで、そうしてこそ人生の価値と意義も大きくなるのである。