さらなるサービス向上:毅程工業
毅程工程(E Chain Industrial)は高雄市岡山の本洲工業区にある。貿易会社から始まり、2008年に工場を設立、原材料調達サービスと生産を行なっている。
総経理の宜立鑫によると、以前同社は部品の仲介貿易を行なっていたが、製品の品質や納期が充分に管理できなかった。図面に従って発注先の工場が生産した製品が使えない時は、顧客からは代金が支払われず、工場側からは代金を請求されることもあり、また工場が海外の顧客から直接注文を受けてしまうこともあり、貿易商の活躍の場は縮小していった。そこで、顧客により良いサービスを提供し、自社の競争力を維持するために、自社工場の設立を決めたのである。
「貿易商はサービス業、工場は製造業の思考で行動しますが、毅程はサービス業から製造業に進出したので、顧客のニーズを知っているという強みがあります」と紀翔瀛は言う。一般の工場が生産に専念するのに対し、「弊社は高価な検査機器に投資し、双方に代わって品質管理をしています。また、顧客のために図面からの製造可能性についても注意しています」と宜立鑫は説明する。この点は重要だ。毅程の転換に寄り添ってきた産業顧問の林進焜は「前段階で図面からの製造可能性を慎重に評価しなければ、製品完成後に問題が生じ、責任の所在が問題になります」と言う。
宜立鑫はゼロからスタートし、林進焜のアドバイスを受けながら工場建設、設備導入、技術模索、人材育成まですべて自ら行なってきた。貿易の経験があり、顧客のニーズが理解できるため、製造の細部にも一層こだわる。例えば同軸度や材質の強度、精度など、顧客の生産ラインに影響を及ぼさないことが重要なのである。
毅程工業は主に欧米の顧客に販売しているため、品質管理にも一層力を注ぐ。「ヨーロッパの顧客は工場の管理を重視します。彼らは、品質は管理が作り出すと考えるからです。完成品を検査するより、生産工程が厳格に管理されていれば、自然と標準にかなった製品が作り出せるからです」と林進焜は説明する。
毅程の締結部品は自動車用が3割、建築用が6割を占め、そのほかは機械用だ。製品は多岐にわたり、カスタマイズ製品も作れば、自社製品も作るというのが市場の変化に対応する同社の戦略だ。新型コロナウイルスの影響で自動車メーカーからの注文は減ったが、アメリカ市場では家屋の修繕ニーズが高まり、建築用の締結部品の注文が激増した。「私たちのお客様は比較的分散していますが、大部分はカスタマイズ製品なのでリスクも分散されています」と宜立鑫は言う。
現在、バイデン政権はインフラ投資法案を提出しており、その予算は1兆米ドルに達するため産業界から期待が寄せられている。世界の電気自動車市場をターゲットとする宜立鑫も、すでに2億台湾ドルを投じて第二工場を拡張した。「台湾の締結部品産業はこれまでの60年、度合いの差はあれ、常に成長してきました」と言う。
工場で技術者とコミュニケーションを取る職人気質の呉順興(左)。