美しい誤解
楽団は設立15年、これまでに300回以上のステージで演奏してきた。街頭パフォーマンスから全台湾ツアー、そして香港、韓国、マレーシア、日本、中国などでもツアーを行なってきた。クラシックからフォークやジャズ、ポップス、映画音楽まで演奏する。「ワールド・ハーモニカ・フェスティバル優勝」、「アジア太平洋ハーモニカ・フェスティバル三冠王」に輝く、世界に知られたプロのハーモニカ・アンサンブルである。
ここまでの道のりは平たんではなかった。師範大学付属高校で、ハーモニカクラブに入ったきっかけもさまざまで、林穎知は「ギタークラブが偉そうだったから」と言う。バスハーモニカを担当する盧怡臻は、最初は興味がなかったが、先輩に誘われ、以来ハーモニカに夢中になった。クロマチックハーモニカを担当する李譲は、幼い頃から音楽を学びたかったがきっかけがなく、高校の時に父親がハーモニカを吹けることを知り、「簡単だぞ。楽譜が読めなくても吹ける」と言われたので、それならと始めたのである。
団長の荘筑迪は、従兄の影響で自分からハーモニカクラブに入った。その頃に、楊志暉と一緒に2001年に台北のハーモニカコンクールの三重奏部門で優勝した。この年、荘筑迪と楊志暉は世界的なハーモニカ楽団アドラー・トリオの演奏を見る機会があり、衝撃を受けた。自分たちも彼らのようになりたいと思い、翌年二人は茱蒂ハーモニカ楽団を結成したのである。
荘筑迪は大学の美術学科に進んだが、ハーモニカに熱中し、楽器店でハーモニカを教えながら海外コンクール参加の資金を稼いだ。大学4年で休学を決意した時、周囲は驚き、卒業だけはした方がいいと勧められたが、「もう美術はやらないと100%決めていました」という。彼は当時、輔仁大学ソーシャルワーク学科に学んでいた李譲にも声をかけて休学させた。幸い、楽団結成から間もなく、日本で開催されたアジア太平洋ハーモニカ大会のトリオ部門で2位に入り、荘筑迪はようやく周囲の理解を得ることができた。
ハーモニカは若い楽器である。ハーモニカが誕生したのは1812年のドイツで、まだ205年と歴史は浅い。新型のクロマチックハーモニカ、バスハーモニカ、コードハーモニカも後に開発され改良されたものである。団長の荘筑迪は、ハーモニカは軽くて携帯に便利だが、メリットがデメリットでもあるという。「簡単に吹けますが、音量が小さく、共鳴もしないので、うまく吹くのは難しいのです」という。他の楽器が演奏できるメンバーも、ハーモニカは難しいという。
ハーモニカ楽団は構成人数によって異なる種類のハーモニカ を組み合わせる。ボタン式で半音ごとの音が出るクロマチッ ク・ハーモニカは主旋律を担当する(上)。バス(低音)ハー モニカは低音とリズムを担当(下の左から4つ目)、下の写真 の右、最も長いのは和音を奏でるコード・ハーモニカ。