多くの外国人学生にとっての最初のカルチャーショックは、「授業中に学生が居眠りしていたり、何かを食べたり、携帯で話したりメールを送ったりしていても、先生は黙認していること」とベリーズから来て淡江大学図書館情報学科で学ぶアントニオさんは言う。彼にとっては、これは学生が学業を軽視していることを意味する。その後、台湾ではどの大学のどの学部に入るかは、入試の成績次第で、多くの学生は興味のない学科で学んでいることを知った。

「それなら、どうして自分の学びたい学部学科に転入しないのか？」と彼は疑問に思う。台湾の大学に通って3年になる彼が観察してきたところ、ほとんどの学生は自分の専攻に興味を持っていない。ただ一人だけ自分が学びたい分野に固執し、退学して兵役に就き、それを終えてから服飾デザイン学科を受験し直した学生がいるという。

これが現状であるなら、教員は授業をおもしろくし、応用面から着手するなどして学生の興味を引き出すべきだとアントニオさんは考える。ところが「中には教えることへの情熱を失っている先生もいます。2時間の授業の間、動きもせず、学生に質問もせず、声も表情も変らない先生もいるのです」

「学科の勉強に興味がないのに、なぜ親や他人の期待に応えるためだけに、4年間も時間と金銭を無駄にするのでしょう」とセントビンセント出身で銘伝大学マスコミ学科で学ぶジャミ･ジャックさんは言う。彼の母国では、若者は大学に行きたくなければ就職し、そうして能力と経験を蓄積すれば、立派にやっていけると言う。

日常生活や学内の活動に積極的に入っていけば、外国人学生も台湾文化に触れるさまざまな機会を得ることができる。

西洋から来た留学生の疑問は、台湾の先生の授業方法にも向けられる。

「母国では、討論や議論は授業の重要な一環です」とエルサルバドルやセントビンセントなど、中米から来た学生は口をそろえる。ところが台湾の先生は一方的に話し続けるか、パワーポイントなどを使って説明するだけで、学生と意見を交わすことは少ない。「こちらから質問しても、多くの先生は十分に応えてくれず、そこから議論を進めるということもありません」

こうした「先生は一方的に教えるだけで、学生の学習のニーズを考えない」という台湾の講義に、彼らは適応していくしかない。

「授業中に質問するのは、私たち数人の外国人学生だけです」ジャミさんは、本当は台湾人学生の考えも聞いてみたいと言う。英語が流暢でなくても、多様な観点からの意見交換こそ重要な学習だからだ。

「台湾の学生は、先生や親や目上の人に疑問をぶつけようとしません」とジャミさんは言う。例えば、成績に疑問があっても台湾の学生は愚痴をこぼしただけで何も行動しないが、彼は先生に、試験の採点が間違っていないかどうか確認をお願いする。「台湾人は肩書を重視しすぎます。博士も学長も、総統も人間なんですから、間違える可能性はあるのです」

中華文化が「師を尊び道を重んずる」ことを強調するのに対し、彼は教師と学生は「互いに尊重し合う」べきだと考える。ジャミさんは今学期、学生を尊重しない先生に遭遇した。この広告学の先生は、最初の授業で学生たちの自己紹介を聞いた後、威厳を持ってこう言ったのである。「もし、君たちが自分は広告のことが分かっていると思っているとすれば、それは何も分かっていないことを意味する」と。ジャミさんは、マスコミ学、特に広告学には創意やアイディア、ブレーンストーミングが必要で、人の意見を聞く包容力がなければ、対話は非常に難しいと考える。

世界各地から来た学生の考え方は、台湾人学生のそれとは大きく異なる。彼らは授業に衝撃をもたらし、台湾人学生にも考え直す機会をもたらす。

「私は広告会社で数年間働いていたので、本当はこの授業にすごく期待していたんです」とジャミさんは表情を曇らせる。それが最初の授業がこのように始まってしまったのだ。数週間後、彼はこの先生と話す機会を得たため、あきらめずに「教員と学生は互いに尊重するべき」という考えを伝えようとした。だが、彼が話し終えないうちに、その先生は感情を害したらしく「もういい！」と言って行ってしまった。

ジャミさんは、この授業への興味を完全に失ったが、必修科目なので履修しないわけにはいかない。そこで彼は授業には出るが、透明人間になったつもりで質問もせず、先生とは何の対話もしないことにした。

これは極端な例かもしれないが、多くの教員は、外国人学生は背景もさまざまなので、教員自身が態度を調整しなければ、多様な学生のニーズには応えられないと感じている。

銘伝大学情報学コースの劉龍龍先生は、外国人学生の学習の動機や条件は台湾人学生と大きく異なると感じている。アメリカ大陸出身の学生の多くは、1年生でも25〜26歳で、すでに専門知識や職場での経験を積んでおり、新しいチャンスを見出すためにアジアへ留学してきた。一方、太平洋の島国やアフリカから来た学生は各種技能を身につけたいと願っているが、基礎知識が不十分なので基礎から教える必要がある。

このように外国人学生がM字型の両極にいて、台湾人学生はその中間という形になるため、教師はフレキシブルに対応し、グループ分けするなどして難易度の異なる内容を教えるとともに、成績のつけかたも変えなければならない。学年が違えば学生の要求も違う。外国人学生は3〜4年生になると、台湾の生活に慣れるが、今後も奨学金を得られるかどうかといった現実的な問題に直面するため、成績を気にするようになる。このような学生の事情も十分に理解する必要がある。

日常生活や学内の活動に積極的に入っていけば、外国人学生も台湾文化に触れるさまざまな機会を得ることができる。

国際学部の授業は外国人学生だけのためのものではなく、台湾人学生も選択できる。だが、台湾人と東南アジア出身の学生はなかなか発言できず「英語が堪能な学生が討論の中心になる」というのが多くの教員の悩みだ。

銘伝大学国際企業と管理コースの杜蕙;生主任は、台湾人学生から「外国人学生をひいきしている」と言われることがある。うっかりすると、授業の半分を外国人学生との討論に費やしてしまう可能性があるのだ。授業の進度を遅らせず、発言しない学生の権利を損なわないようにするのは難しい。

ここ2年ほど、杜蕙;生主任は台湾人学生が討論に加われるよう気を配り「目で合図をすれば発言させる」と伝えた。これによって、一部の台湾人学生も堂々と英語で議論ができるようになったと言う。

「台湾人学生と外国人学生をミックスしてグループ分けするのも良い方法です」と淡江大学国際貿易学科の余佩;璇;先生は言う。以前は一方的に講義するだけだったが、外国人学生が居眠りするのを見て、方法を変えた。事例研究やレポート、実務オペレーション、フィルム鑑賞など多様な方法を取り入れると、学生の反応も明らかに違ってきた。台湾人学生と外国人学生を合わせてグループ分けし、英語レベルの高い学生を懸け橋として中に入れると、かなり高い成果が上がるという。

日常生活や学内の活動に積極的に入っていけば、外国人学生も台湾文化に触れるさまざまな機会を得ることができる。

台湾人教員の教え方について、アジアやアフリカ、東欧出身の学生の評価は、アメリカや西欧の学生のそれとはまったく異なる。

「チェコでは先生は教室の主役で、学生は黙って聞くだけです。でも台湾では先生は一歩退いてチームワークを強調するので、これは新しい経験です」と話すのは交換留学で政治大学中文学科に学ぶズザナさんだ。韓国出身で政治大学外交学科4年生の申雅嵐さんによると、韓国の大学ではどの授業も点呼を取るが、政治大学ではそれはなく、授業もリラックスしていて「あまり良くない」と言う。

学生の管理という面で、外国人と台湾人を均しく扱うべきかどうかも議論の余地がある。

「私は銘伝大学の点呼制度が嫌いです」と話すのは南太平洋のキリバスから来たタウアさんだ。外国人学生の大部分は、仕事の経験もあり、年齢もやや高い。そうした学生にとって、授業での点呼は、無理強いされ、あまり尊重されていないと感じるものだ。また授業に出るより自分で学んだ方が効率が高い場合は、授業に出る必要もないではないかと言う。

体育の授業では、外国人学生はバドミントンやバスケットボールの基本動作やルールはすでにマスターしているのに、先生はフレキシブルな教え方をせず、しかも点呼を取るので、辛くてたまらない。

日常生活や学内の活動に積極的に入っていけば、外国人学生も台湾文化に触れるさまざまな機会を得ることができる。

角度を変えて見てみよう。台湾人学生が、外国人学生のいる授業に参加すると、どのような影響を受けるのだろう。

「以前は、与えられたものをそのまま受け取るだけでした」と話すのは銘伝大学国際学部2年生の台湾人学生、褚;韋;宏さんだ。彼は外国人学生との交流を通して英語力が急速に伸びただけではない。最大の変化は、能動的に学習する情熱が湧いてきたことだと言う。将来の道はまだ明確ではないが、興味のあることに出会ったら、それを追求することが出来るようになったと言う。

例えば、今はレポートの準備をしているが、以前のようにコピーして貼り付けたり、大量の資料でパワーポイントを作ったりするだけでは飽き足らなくなっている。時間をかけて、全体の内容を消化吸収し、自分の言葉で説明すれば、クラスメートにも分かりやすいし、自分も達成感を得られると言う。

「でも、外国人には良い習慣も悪い習慣もあり、悪いところは反面教師にしなければなりません」と言う。例えば、中南米出身のクラスメートは気ままなところがあり、行動も自己中心的で、他人の便宜や感情を顧みないところがある。こんなことがあった。ある会議に出席すると約束したのに、人を待たせた挙句、結局は約束を破られた。以前の彼なら文句も言えなかったが、今は本人に抗議することができる。また、イベントでは、外国人学生が楽な仕事ばかり選び、不公平が生じることがあるが、そういう時も彼は公平のために主張を譲らない。

外国人学生が台湾の教室に入り、穏やかだった水をかき混ぜているが、教室の外のキャンパスは何も変ろうとしない。政治大学国際事務処の陳樹衡処長によると、例えば外国人学生に自殺のおそれがあっても、学校の指導センターは「外国人学生は私たちの業務対象ではない」としてカウンセリングを拒否するという。事務部門からは「外国人学生は面倒を起こす」「資源を占有している」といった声が聞かれるという。

台湾は以前から多様な価値と友好性を誇りとしてきたが、大学国際化という角度から見ると、まだまだ進歩が必要なようである。

朋遠方より来るあり、亦た楽しからずや――すでに外国の学生を歓迎し、彼らの意見も聞いたのだから、それに応えていってこそ、国際化の初心を貫けるのではないだろうか。

日常生活や学内の活動に積極的に入っていけば、外国人学生も台湾文化に触れるさまざまな機会を得ることができる。

日常生活や学内の活動に積極的に入っていけば、外国人学生も台湾文化に触れるさまざまな機会を得ることができる。

日常生活や学内の活動に積極的に入っていけば、外国人学生も台湾文化に触れるさまざまな機会を得ることができる。

大学や教員も、台湾の教育に対する外国人学生の意見に耳を傾けて調整していってこそ国際化の価値を貫けると言えるだろう。