「聞きたいことは何ですか?」
彼女は大学に戻り、学業を続けながら難民のことを常に考えていた。「しかし、まだ学生の自分に何ができるかわかりませんでした。いずれにせよ、また世界を見に行こうと思っていました」そこで、行動力のある彼女はさまざまな計画を立て始めた。2016年、彼女は教育部に「大学‧短大国際学生国際体験教育計画」を申請した。外国の学生たちの中国語学習状況と、中欧および東欧での台湾の発展空間を理解するという計画で、計画は認められた。
そこで海外の多くの在外公館を訪ねた。2016年の夏、ハンガリーの在外公館を訪れた時、駐ハンガリーの陶文隆‧大使と会うことができ「聞きたいことは何ですか?」と問われた。この一言が、彼女の人生に大きな意味を持つことになる。
大使は、胡鈞媛が準備していた質問に答え終えると、再び「聞きたいことは何ですか」と問いかけた。そして大使は「この社会では、情報を集めるのは難しくありませんが、難しいのは正しい問いを持つことです」と語ったのである。
以来彼女は「聞きたいことは何ですか」と自らに問い続け、世界に問い続けた。問題解決のためのASK(Always Seek Knowledge)が座右の銘になった。「正しい問いを投げかけることで、自分の夢を見出せました」と、胡鈞媛は顔を輝かせる。「私の夢は自分の成功ではなく、人の役に立つことです」と言う。そして大学卒業を前に、「国際難民問題」を考えるためにロンドン大学大学院の教育および国際開発修士課程に進学することを決めた。
庇護を求める道へ
庇護を求める難民は多くの種類に分けられるが、彼女は主に戦争難民とジェンダー難民に関心を注いでいる。「この二つは人数は非常に多いのにも関わらず、リソースが少ないのです」と言う。膨大な人数になる戦争難民は、多くの国の庇護の対象となる。一方のジェンダー難民は、ここ数年ようやく取り上げられるようになった。多くの国でLGBTQが迫害されていることから生じる特殊な難民である。「こうした難民はジェンダー多様性に寛容な庇護国を見つけるのが難しいのですが、台湾はこの面で世界有数の多様性を認めている国なのです」
イギリスで修士号を取得した彼女は、帰国するとすぐにユネスコの青年研究院計画に参加し、それと同時にRefugee 101 Taiwanを設立した。さらに教育部青年発展署国際組で青年諮問委員も務めている。
彼女は各地で講演し、団体のカリキュラムを通して参加者に「難民法」と難民の境遇を経験させる。また海外の難民団体と台湾人権促進会の協力や会談を進め、台湾人と難民の交流の機会を積極的に設けることで、台湾が難民庇護国になる可能性を探っている。困難な目標を達成するには、まずじっくりとエネルギーを蓄える必要がある。難民に関する課題は一朝一夕に解決できるものではなく、胡鈞媛は自分が長い道を歩んでいることを知っている。
これからずっとこの道を歩んでいこうと思う原動力を問うと、胡鈞媛は穏やかな声でこう答えた。「当初青年大使に応募したのは、世界に台湾を——T.A.I.W.A.N.(The Amiable Individuals Welcome All Nations/友好的な人々がすべての国を歓迎する)として紹介したかったからです。台湾をそういう国にしたいという思いが私の原動力です」と言う。
胡鈞媛は、母なる台湾に永遠の憧憬を抱いている。「台湾には包容力、人権、自由があり、団結しています。そして常にもっと進歩すべきところがあると知っていて努力し続けているのです」と言い、目を輝かせた。「私は永遠に進歩し続ける台湾を誇りに思い、自分が台湾人であることを誇りに思っています」
胡鈞媛はパレスチナのヘブロンで抗争に巻き込まれたが、現地の人々にとってはこれが日常生活なのである。
スウェーデンで道に迷っていた胡鈞媛は、アルバイトで生計を立てているスーダン難民の一家に助けられた。この家族は彼女を駅まで送ってくれた上に、彼女がお金に困っていると思い、首都行きの高価なチケットまで買ってくれた。
さまざまな国から来て苦しい生活を余儀なくされていても、難民キャンプの子供たちはカメラを見ると明るい笑顔を見せる。写真はヨルダンのジャラシュ・キャンプ。