技術職業教育の輸出
だが実際には、技術職業教育の発展は教育政策全体の影響を受けるため、単独で考えるわけにはいかない。特に大学の今後の発展方向が不明瞭で、各校が次々と収益につながる学科や研究所を設立している中、高等技術職業教育の市場が普通大学に取られてしまう恐れはある。そのため、教育部のさまざまな措置の下で、技術職業教育が教育体系からしだいに追い出されてしまうのではないかという不安が生じているのである。
この点について教育部技術職業司専門委員の林騰蛟氏は、学生総数の6割以上が学ぶ技術職業系は、そう簡単に廃止されるようなことはないが、将来的には内容面で変革がある可能性があると言う。養成教育と基礎知識の提供を強化し、専門技術面を低下していけば、技術職業体系の鮮明な色彩はしだいに薄くなっていくだろう。
一方、台湾では学生数が年々減少し、技術職業学校では学生集めの競争が激化しているが、そうした中で「技術職業教育の輸出」が生き残りのための一つの道となっている。
昨年1月、国家政策研究基金会教育文化チームの楊朝祥幹事長は「技術職業教育の輸出によって教育地図を拡大する」という構想を発表した。
ここ数年、技術職業大学が急激に増設されたため学生の平均的な質が低下したと言われているが、楊朝祥氏は、高等教育以外で、我が国で輸出に最もふさわしくその実力があるのは技術職業教育だと考えている。「我が国の技術職業教育は内容が深く範囲も広いため、これまで経済建設に貢献できる人材を少なからず育成し、台湾経済の奇跡を生み出してきました。これは多くの発展途上国も学べる点です」と言う。
楊朝祥氏によると、技術職業教育の輸出においては、これまでにも成功例がある。例えば、サウジアラビアは毎年夏休みに教員や学生を台湾に派遣し、農業技術で知られる屏東科技大学で技術職業訓練を受けている。また台湾科技大学はコスタリカで技術職業教育の援助プランを推進しており、現地で広く歓迎されている。
林騰蛟氏も、教育の輸出、つまり学校が国外で教育を行なったり、あるいは海外からの留学生を募ったりするというのは、一つの可能な方法だと考えている。
海外の統計によると、海外からの留学生が2人いるだけで、そこに1人分の雇用機会が生まれるとされている。アメリカ国内では世界各国出身の54万人もの留学生が学んでおり、そこから年間110億米ドルの収益が上がっている。オーストラリアでも、教育サービス産業が同国第三の輸出産業となっている。
今年3月初旬、台湾の29の技術職業大学がマレーシアで行なわれた第一回東南アジア技術職業教育展に参加し、我が国の教育部長である黄栄村氏も自ら参加して台湾の技術職業教育を紹介し、売り込んだ。その結果、台湾の技術職業学校はマレーシアの公立中学と独立中学および産業界と、それぞれ戦略的連盟の契約を交わすこととなり、マレーシアの学生の台湾留学に奨学金を提供するほか、将来的には台湾の技術職業学校の教員がマレーシアに赴き、現地で学校や企業と協力し、技術の向上を目指すこととなった。
しかし、教育の輸出は台湾の高等技術職業教育の「万能薬」ではない。明確で強固な政策を定め、第二のトラックを正しい方向へと導いていくことこそ根本的な解決の道なのである。
(左・右)私立弘光科技大学化粧品応用・管理学科のカリキュラムには、化粧品テクノロジー、美容技術、文化芸術、経営学などがあり、学識と技能を兼ね備えたプロの人材育成を目指している。
農学から始まった屏東科技大学の畜産学科はすでに30余年の歴史を持ち、畜産のオートメーション管理と製品加工などの実務的訓練を重視している。