「なごみ」と「発散」
気持ちを和ませてくれるものと、不満を発散させてくれるもの、というのが癒し系玩具の特徴だが、台湾のメーカー、多意田(Do More Idea)は、それを代表する文具を開発した。
同社でブランド戦略を担当する穆冠樺さんはこう説明する。どの会社にも、上司におべっかを使ったり、人の噂をまき散らしたりする嫌な同僚がいるものだが、自分ではどうしようもない。そこで、そうした「小人(しょうじん)」に復讐するという気持ちで開発されたのが「設計小人(嫌な奴を懲らしめる)」シリーズだ。
例えば、オフィスで人気があるのは、小人が跪いて名刺を差し出している形の名刺入れや、小人のおしりに鉛筆を刺して削る鉛筆削り、使うたびに小人が360度回転するセロテープカッターなどだ。
しばらく前、フランスのティアー・プロッド社の「呪いのサルコジ人形」が話題になった。サルコジ大統領の似顔絵を描いた人形で、大統領に不満を持つ人々が人形に針を刺して憂さを晴らせるというものだが、「設計小人」は「匿名」の嫌な奴を懲らしめるというアイディアで、各自が嫌いな人に見立てて遊ぶことができる。
消費社会学を研究する東呉大学社会学科の劉維公準教授は、印象的な「癒し系」商品として「彼氏のうでまくら」という安眠グッズを挙げる。男性の肩から腕にかけての形をしていて、彼氏に守られているような感じで眠れるというものだ。
「失恋した女性や独身女性にとって、恋人の腕に抱かれているようで、寂しさを癒す効果があるでしょう」と言う。
学者が指摘するように、こうした「癒し系」玩具が広く受け入れられていることは、現代社会において人間関係が希薄になっていることの証しでもある。現代人の不満や疲れや寂しさを、ほんのひと時忘れさせてくれる小さな世界は、今後どのようなビジネスと影響力をもたらすのか、これからも注目していきたい。
嫌いな同僚に見立てて仕返しをする「設計小人」シリーズは、ばかばかしいが確かに憂さ晴らしになる。上の写真は「小人」のおしりに鉛筆を刺す鉛筆削りとキーホルダー、右は「小人」をぐるぐる回すセロテープカッター。