台湾イチゴの新品種「台農1号」
もう一つの「十年一剣を磨く」育種の実例は、真っ赤なイチゴである。イチゴ狩りは台湾の冬のフルーツ狩りの定番となっている。
一昨年(2021年)、農業委員会農業試験所は、香りが強く、歯ごたえがあり、貯蔵や輸送に強いイチゴ「台豊1号」の育種に10年かけて成功したことを公表した。農家が栽培できるよう、すでに種苗業者にライセンスを付与している。農業試験場によると、一般人が種苗を購入した後、自家栽培した種苗株を、第三者に販売したり、譲渡したりすることは禁じられており、そうした場合、権利の侵害になるという。
イチゴ「台豊1号」の育種家であり、農業試験所作物遺伝資源係の副研究員である蕭翌柱は、2011年以来、病気に強く、香りの高いイチゴの品種を開発し、それらを交配してきたという。その後、増殖と選抜の長い道のりが続いた。
育種のプロセスは「本当に大変な作業だった」と蕭翌柱は、振り返る。受粉後、まず果実を収穫して、次に種子を得、組織培養の無菌播種技術を応用して3~4年かけて苗を育成し、弱いものを除き強いものを残し、健康な苗を得た後、数年にわたる増殖と系統選抜の実験研究を何年も展開したという。
この間、温室での病害虫試験、圃場での植え付け順化などを経て、現代の環境と消費者の嗜好に合った新品種のイチゴが選抜され、最終的に「台農1号」イチゴと命名されて出願し、品種登録がされたのである。育種のプロセスは、結果が出るまで「次々と難関を突破」しなければならない。
農業部農糧署によると、育成者権は農業における重要かつ独自の知的財産権であり、育種家の権利と利益を保護するだけでなく、新品種の研究開発におけるイノベーションを促し、国内農業の発展を促すものである。1988年。育成者権の保護を実施する『植物種苗法』(現在の『植物品種及種苗法』)が公布され、現在までに219種の植物、1,550品種に育成者権が付与されている。
台湾は、国際的に有名な蘭、パイナップル、マンゴー、茶葉などの農産物を誇っているが、育種技術はその成功の重要な要因の一つである。劉申権や農業試験所など育種専門家の知恵や努力によって、台湾農業の奥行きが深まり、台湾農業のソフトパワーが実証されてきた。育成者権が尊重されることで、生産者と消費者は、農業をより永続的に発展させることができるのだ。
「宝島甘露梨」の包装には、登録商標が印刷されている。(劉浩祐提供)
梱包ラインのスタッフは、梨の大きさによって格付けしている。
劉申権は、整備工から「梨おじいさん」に転身してから「宝島甘露梨」を育種するまでに20年の歳月と苦労を要した。
台中市后里区の梨農家・鄭豊源の梨園では、6月末に「宝島甘露梨」が収穫を迎える。
「宝島甘露梨」が大豊作となり、梨農家は、採れたての梨を運搬車両に満載して梱包ラインへ向かう。