3万5千人の心の声
蔡嘉陽によると、工業局の委託で台湾綜合研究院が実施した「石化産業政策環境影響評価」データでは台湾の石化製品自給率は9割に達している。新設の国光石化は利益を主に輸出に頼ることになるが、水質汚染と大気汚染を台湾に残す。また、国光の一日40万トンの水消費は、彰化全県の生活・農業用水より多い。政府はそのために大度河堰を建設し、北彰化から全長66kmのトンネルを掘り南彰化まで水を送って中部の水不足問題に拍車をかけ、河川を搾り取り、砂嵐を悪化させる。建設の必要性が問われる。
2000ha以上の資金は全部で24億元になる。そこでまず国光工業地帯と工業港の間の潮間帯200haの購入を計画している。ここはウスイロイルカの南北回遊路であり、国光石化の土地の分断が可能だからだ。第二、三段階の募金で周辺の1800haを購入していく。
「一口でも少なくない。百口でも多すぎない。誰でも地主になれるんです」陳瑞賓によると、第一段階で200万口を集められる予定だが、7月7日現在3万5千人が呼びかけに応え、集まった資金は1億8千万元、150万口を超え、目標に近づいている。
蔡嘉陽は、ナショナルトラストは『信託法』第8章「公益信託」の条項に基づいて実施しているが、これまで公益信託と言えば、企業家が亡くなっても子孫に財産を残さず、銀行に管理を委託して公益事業への運用を約定するパターンが多かったという。自然環境や文化遺産を対象にした信託は国内初だ。
政府が環境保護団体に土地を売らなかったらどうするのか。
「政府になぜ売らないのか聞きますよ」。資金を出して支持する市民が3万5000人いる。背後に存在する巨大な民意は無視できないはずだ。この信託案件は主管官庁である内政部に提出済みだ。結果は一ヵ月後に明らかになる。
台北市西門町の紅楼前で、大人と子供がウスイロイルカを守るために土地を買おうと呼びかける。(林文正撮影)