「花言葉」が心を表わす
崔玖医師は、もとは産婦人科の医師で、50歳近くになってアメリカから台湾に戻ってきた。縁があって鍼灸や気功に触れて以来、科学的方法での中国医学と西洋医学の統合という長い道を歩むこととなり、「国際医学科学研究基金会」と「新円山クリニック」を設立した。
クリニック設立から18年、彼女はエネルギー医学に啓発され、器機を用いて測定し診断することで、中国医学における経絡や気という現象の存在を証明した。そして十数年前にフラワーエッセンス療法を知り、そこに心と情緒調整の媒介を見出したのである。
「情緒の起伏の根底には心に受けた傷があります。そこで自分の情緒の状態に合った花のエッセンスを服用すると、エッセンスが心身のアンバランスな部分と共振し、自然治癒力を導き出すのです」と説明する。多くの病気は、かつて受けた心の傷が原因になっており、それを癒すことで身体の病痛も癒されるのである。
ビジネス界で活躍するある女性はひどい生理痛に悩まされていた。彼女は花のエッセンスに導かれて、自分が男尊女卑の家庭で育ったこと、女性であることを怨んできたことなどを語った。そして彼女は花のエッセンスを服用することで、その憎しみを解き、女性の性器を嫌わなくなり、生理痛もなくなったのである。
崔医師は、フラワーエッセンス療法のエッセンスは、巷で流行しているアロマテラピーのエッセンスオイルとは異なると説明する。これはイギリスのエドワード・バック(バッチ)医師が、ホメオパシーの概念を用いて1936年に開発したもので、38種類のエッセンスがあり、それぞれが異なる情緒を代表している。
医師としての最後の戦い
フラワーエッセンスは口腹薬としてヨーロッパの家庭に普及しており、台湾でも現地の花を使った80種余りが開発されている。崔医師のユニークな点は、ツボ測定器を使って花による反応の違いを測定し、最もふさわしいエッセンスを選ぶ点である。
研究を好む崔医師は、一連の実験を行ってきた。4000人余りの患者のフラワーエッセンスに対する反応を調べ、そこから多くの現象を発見した。例えば、台湾では長男と末っ子のプレッシャーが大きく、中間の子供たちは自分は重視されていないと感じている。現在50〜60歳の人は、今も子供の頃に親や教師から受けた体罰などを忘れられずにいる。特に酒に酔った親の暴力を見た子供の心の傷は深い。また、男尊女卑に反発して努力し、経済力をつける女性も多いが、その多くは結婚が順調ではなく、独身者も多い。男性は家族や社会からの期待が大きすぎ、それに応えられずに劣等感を抱くことも少なくない。
「私は台湾に住んでいた期間が長くないため、台湾の家庭や文化の問題を理解していませんでしたが、花のエッセンスがすべてを教えてくれました」と崔医師は言う。
花は人の言葉より多くのメッセージを伝えてくれると崔医師は言う。彼女は今、各種疾病におけるフラワーエッセンス療法のデータを集めており、政府や業界のサポートを得たいと考えている。以前はエイズ患者を対象に研究し、医療行為の中に「ホメオパシー」の項目を加えるよう働きかけるために立法委員に公聴会を開いてもらったこともあるのだが、成果はなかった。むしろ中国大陸の政府から善意が示され、この計画への資金が提供されるかも知れない。
次は四川大地震被災者の心のケアに取り組み、業界に成果を見せつけたいと考えている。
「これは最後の勝負です」すでに82歳と高齢の崔玖医師は、穏やかな笑顔に少し憂いをにじませた。