初のベトナム語版台湾文学
台南市文化局「文化新南向」政策に伴い、「葉石濤短編小説ベトナム語翻訳プロジェクト」が昨年始まった。台湾文学館の元館長、陳益源によって、葉石濤の初期、中期、晩期から8編の短編が選ばれ、ハノイ国家大学人文社会科学大学文学部のグエン・トゥー・ヒエン副主任などによる翻訳で、純文学書籍ではベトナム最大の国営出版社から発行された。
台南は「台湾の文学の都」を自称しており、文化局長の葉沢山も、外国語翻訳を通して台湾文学を世界に紹介することが文化局のねらいだという。例えば葉石濤の文学はすでに英語、日本語、韓国語に翻訳されており、今年はマレーシア語にも訳される予定だ。9500万人のベトナム人口は今後5〜10年内に1億人を超えると見込まれ、台湾の新南向政策にとって重要な国だ。このベトナム語版『葫蘆巷春夢——葉石濤短編小説』は、ベトナム語に訳された初の台湾文学書籍というだけでなく、ベトナムの人々が台湾文学を知り、ひいては同著を手に台南観光できるという、文化交流の役割も期待されている。
現在、臨時に金門大学人文社会学部学部長を務める陳益源は、ベトナムの古文であるハンノム(漢字とベトナム文字の混じり文)の研究者だ。陳は「葉石濤は多くの作品を残しただけでなく、台湾文学研究の先駆者であり、今回のベトナム語翻訳出版を通して、台湾文学にあまり馴染みのないベトナム人との文化交流が深まれば」と期待する。
若いベトナムの研究者や中華文化の好きなベトナム人が同書を読んで、さらに台湾や台南を知りたがっていると、陳益源はベトナムの友人たちから言われた。またベトナムの出版社には、アメリカ国籍のベトナム人からも注文が寄せられているという。『葫蘆巷春夢』はハノイ大学文学学科の教材にもなったため、中国からベトナム留学した多くの学生も台湾文学に接する機会を得ている。
台南市文化局が昨年12月にハノイ国家大学で新刊発表会を催した際には、駐ベトナム経済文化代表処からも支援があり、同著は当日参加したベトナムの官僚やメディアにも贈られ、新南向政策の文化観光推進に一役買った。台湾に住む多くのベトナム人のためにも、文化局の葉沢山はベトナム語『葫蘆巷春夢』の再版を約束した。また文化局でも、文化スポットの紹介に日本語や韓国語のほかにベトナム語も加える計画だ。

台南市にある緩慢文旅は、葉石濤の文学作品を旅のインスピレーションとしている。(荘坤儒撮影)