南京で屋外の大宴会
2010年10月、ある台湾人企業家が南京で台湾製の食品やパソコン、自転車などを販売する「台湾名品城」をオープンした。その開幕の日、屋根のない中庭で円卓120テーブル、1200人の来賓を招いたパーティを開くことにしたが、これほどの規模の宴会を仕切れるシェフは現地におらず、台湾の阿基シェフに依頼したのである。
この盛大な屋外宴会のために阿基シェフは1ヶ月半前から準備を始めた。食器類の他に、沙茶醤、醤油膏、酢、哈哈豆板醤、漬物類など台湾の調味料、さらに台湾で下準備をした半製品とSGS検査に合格した食材など、コンテナ1.5個分を台湾から南京へ輸送した。
宴会が始まる前、阿基シェフはまず会場の食器に埃がついていないかどうかを気にした。南京のほとんどの人は台湾料理を食べたことがないので、口に合うかどうか分からない。だが、何より大切なのは衛生的であること、そして屋外であってもサービスは高級ホテル並みでなければならない。
パーティの初めに、阿基シェフは来賓にこう挨拶した。「本日お出しするのは本場の台湾料理です。今日、台湾では美味しい料理は食べられません。なぜなら、台湾の名シェフが全員ここに来ているからです」
台湾のシェフたちによる大陸での初めての辦卓と聞いて、数百人の記者や現地の飲食業者が周囲を囲んだ。「屋外の宴会のどこが高級なんですか」とある記者が聞いた。
「台湾の辦卓文化は非常に親しみやすいものですが、実は料理は高級なんです」と阿基シェフは言う。台湾は人情が厚く、屋外の宴会でもお客は主人を立てて気取らずに参加するので、主人側も一番上等な料理でもてなすのである。
80分以内にすべての料理を出し、120卓、1200人分の宴席を仕切るには、料理の腕だけでなく、構成力や組織力も試される。「辦卓では精確さが大切です」と言う通り、下準備から料理を出す順番まで、頭の中に完全な構図が組まれていなければならない。
阿基シェフら台湾の料理人20人は、南京で台湾料理の評判を大いに高め、現地のシェフとも交流した。阿基シェフは、南京のシェフたちの繊細な仕事が印象に残ったと言う。
阿基シェフによると、大陸では人手があるため、手間をかけた料理が作れる。例えば、戻した干しエビを小さなペンチで一つずつつまみ、4時間もかけて花の形の前菜を作る。また1時間以上かけて水の中で豆腐を菊の形に切り、それを揚げる。これほどの手間のかかる料理を台湾で作るのは不可能だ。
阿基シェフは美味しい料理を簡単に作る方法を教えている。