花追い人の羽根
しかし、悪い知らせばかりではない。頭を垂れて腰を屈めて野草に親しむ人が、人数は正確に見積もれないものの、静かに増え続けている。「花追い人の羽根」というブログを運営するCandy Candyもその一人である。花を追う情熱に溢れるCandy Candyは、この一年余りで山から海まで植物観察記録を百回以上更新してきた。タイワンホトドキスを見ようと3週間続けて4カ所の山を歩き、蛇の群れに出くわして諦めかけた時、ついに目の前に出現したという。ギンリョウソウを探すために休暇を取って、気温5度の冬の北部横断道路を辿り、険しい山道を3時間も歩いて、湿った広葉樹林の中でようやく出会うことができた。天然記念物クラスの寄生植物であるヤッコソウを探して、Candy Candyは1か月半の間に4回も東眼山を歩いた。毎回10キロも歩き、ヤッコソウが頭を出してから開花するまで観察を記録した。「ある植物が気になりだすと、寝る間も惜しみ、山も川も越えて探すのも苦になりません」と、その花を追う精神は恋愛にも似ている。
実のところ、Candy Candyを代表とする花追い人はまったく挙動不審で、道端に蹲り草むらを這いまわる姿は、そこに高価な宝石が埋もれているかのようである。
彼らは、春夏秋冬にわたって開花や結実の日を数え、その時期に合わせて行動スケジュールを組んでいる。山を歩き回って、ようやく追い求めた花を見つけた時は、感動の余り涙を流すほどで、アイドルの追っかけにも似ている。
台湾の南北に広がり、ネットワークを作り上げているのが、台湾の野草をすべて見てやろうと意欲満々の人々で、ここではとりあえず「花追い人」と名付けよう。
国立公園や荒野保護協会、それに各地の森林公園などが、これまで花追い人を育成し、自然観察のボランティアを養成して自然保護の種を植え付けてきた。
そんなボランティアの例を紹介しよう。高雄県前鎮高校の国語教師だった陳慧珠は、定年退職後に杉林渓の自然解説ボランティアとなった。ペンネームを范持槧という林金松はコンピュータ会社に勤務していたが、植物に興味を持って荒野保護協会に参加し、今ではコミュニティカレッジで野外観察コースを指導している。陽明山国立公園の解説ボランティアだった庫老は、植物の品種を見分ける能力が高く、同好の士の植物に関する質問に答えてきた。Facebookのグループ「台湾行道樹」「鳥語花香」「これは何の花?」などには、万を数えるフォロワーがいて、定期的に自然観察イベントを行っているという。
野原の草花はアフルエンザ(消費伝染病)を癒してくれる。シンテンセンブリ(左)、カノコユリ(中央)、タイワントリカブト(右)はいずれも人気のある野の花だ。