図書館の公共性の変化
陳玉霖は、時代は変化しており、図書館も単に蔵書と読書の場所にとどまっていてはならないと考える。現代の図書館は講座や展覧会も開催でき、さまざまな学習の機会とその空間を提供するべきなのだという。
かつて、社会の進歩の象徴だった文化センターが持っていた公共性は、多くの人が同じことをすることを意味していた。例えば、一緒に音楽会を聴いたり、一緒に国旗掲揚式に参加したりするというものだ。しかし「私が定義する現代の公共性とは、同じ空間にいながら一人一人が異なることをすることです」と陳玉霖は言う。
大衆から小衆へ。屏東図書館の目標は、小衆がここで自分の居場所を見つけられるようにすることなのである。
例えば、若者をひきつけるために3階には漫画や映像‧音楽などの蔵書があり、大きな階段がある。ここはかつて建物全体の中心的な場所で、中二階にびっしりと書架が並ぶ書庫だった。設計チームはここの書架を取り払い、上の階までの吹き抜けの白い大きな階段を設けてイベントを開催できるようにした。当初、階段エリアは映画を上映したり、講座を開くために設けたのだが、現在では若者が逆向きに座り、階段を机替わりにして宿題をしたり話し合ったりするなど、勉強の場になっている。
図書館は都市にも似ていて、さまざまなエリアがある。だが、設計チームはここを碁盤の目の整然とした都市にするのではなく、鹿港や台南安平にあるような古い市街地に見立てて思いのままに歩けるようにした。道に迷っても有名な廟やランドマークがあって自分の居場所が分かる。そこで設計チームは館内に二つの吹き抜け空間を作り、空間の流動性を高めた。
「道に迷うのも楽しいものです」と話す陳玉霖は、道に迷っても歩いていけば自分の位置が分かると言う。感覚を頼りにしていても出口やトイレ、主要なエリアは見つけられ、これは公共建築の設計にとって重要なことだと言う。