積み木を積むようにコンセンサスを得る
では、台湾海峡の平和という困難な任務をどう成し遂げたのか。まず「切迫したものを先に、急がないものは後に、容易なものを先に、困難なものは後に、経済を先に、政治は後に」という原則で両岸協議の議題の優先順位を決め、敏感な議題のために全体が先送りされないようにした。
こうして一層ずつ信頼関係を築いていく「積み木」方式で、台湾海峡は過去5年の間に18項目の協定に署名を交わすことができた。その内容は、直行便開通、観光、経済交流、知的財産権保護、原子力エネルギーの安全、司法協力など多岐にわたる。
現在、台湾海峡両岸間の定期航空便は616便まで増え、大陸からは年間250万人の観光客が台湾を訪れ、双方の協力関係は日増しに緊密になっている。例えば、2003年にSARSが流行した時、中国大陸は台湾の需要を完全に無視し、情報を全面的に公表しようとしなかった。しかし、現在発生している鳥インフルエンザH7N9の場合、両岸の公衆衛生専門家はすぐに流行拡大阻止のために協力を開始した。
馬総統は、我が国は将来的に「責任あるステークホルダー(利害関係者)」として、台湾海峡の平和維持に力を注ぐとともに、過去の両岸協議における経験を他の国際論争解決に活かしていくと述べた。
例えば昨年8月、馬総統は「東シナ海平和イニシアチブ」を提起し、釣魚台列島(日本名:尖閣諸島)の主権争議において、衝突ではなく対話をと呼びかけた。同年11月、台日双方は漁業協定に関する協議を行なった。台日間ではこれまで16回にわたって漁業協議を行なってきたが合意は得られていなかった。今回は双方が、領土および海域に関する主張の違いを棚上げすることで合意に達し、それによって漁業資源の保護・管理という面からの協議が可能になり、先頃、ついに「台日漁業協定」に署名が交わされたのである。今後、両国の漁船は台湾本島の2倍の広さの海域で操業する際に、その安全が保障されることとなった。この協定は台日関係の歴史におけるマイルストーンとなるものである。
強固な台米友好関係
馬英九総統に対し、ライス元国務長官からは、「両岸がしだいに接近する中、台米関係の発展には影響をおよぼさないか」との質問が提出された。
これに対して馬総統は「米国は台湾にとって極めて重要な経済・安全保障の盟友であり、台湾にとっては世界第三の貿易パートナーでもある。貿易面で中国大陸が台湾にとっていかに重要であっても、台湾は米国との経済貿易関係強化のための努力を続けていく。また、台湾と中国大陸の和解は、米国を含む国際社会にも利益をもたらす」と答えた。
また、米国産牛肉輸入問題が解決した後、貿易交渉も再開された。昨年11月には米国のビザ免除プログラム(VWP)が正式に我が国に適用されることとなった。中華民国は世界で37番目にこの待遇を受ける国となり、また唯一米国と正式な外交関係のない国でもある。ここからも、台米関係強化に対する我が国の努力を米国が評価していることがわかる。
台湾と米国はともに民主主義を愛し、人権と法の支配を尊重し、自由貿易体制を支持し、さらにバスケットボールや野球に熱狂するなど、価値観の面で多くの共通点があり、今後も各種交流を発展させていきたいと馬総統は述べた。
将来的には、経済発展と安全保障のために、台湾は環太平洋パートナーシップ(TPP)および東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などへの参加を求め、また米国の協力の下、防衛力を高めていく。
今回の意義深いテレビ会議において、馬総統は台湾海峡の平和追求の経験と、台米関係強化への決意と方法を語った。華人社会唯一の民主国家として、台湾は世界の模範市民たるべく努力していく。