若い頃に石鹸売りをしていた林義財は、石鹸のアルカリ成分が強すぎて手が荒れてしまい、さまざまな石鹸を試したが、症状は悪化するばかりだった。そこで、自分で苛性ソーダの改良から始めて、肌に優しい中性石鹸の配合を編み出し、1957年に弟と一緒に石鹸メーカー「美盛堂」を立ち上げた。
彼らの事業は1970年代にピークを迎え、洗濯や入浴用の石鹸が月に6万個も売れた。しかし良い時期は続かず、90年代にボディシャンプーが普及し始めると、「美盛堂」の石鹸を買う人は激減し、商売をやめるしかなくなった。
それ以来、ボディシャンプーは相変わらず売れ続けているが、台湾でも環境問題や健康に関する意識が高まり、天然素材の手作り石鹸が再び脚光を浴びるようになってきた。そこで2000年初、林家の三代目がこの趨勢に注目して事業再開を考えるようになり、家族での話し合いを重ね、それが実現することとなった。メインの商品は緑茶を使った石鹸で、美盛堂はこれを「茶山房」と名付け、新北市の三峡で商売を再開した。2010年には、かつての工場を観光工場に改修し、観光客に石鹸作りを楽しんでもらっている。
現在の石鹸工場は、半世紀前の林家兄弟の時代とは大きく様変わりしたが、品質へのこだわりは今も少しも変わらない。
10年近く休業した後、林家は再び手作り石鹸の事業を始めた。
石鹸の半製品が整然と並ぶ。室温で2日かけて冷ましながら凝固させる。
「茶山房」は林家伝統の製法を受け継ぎ、古い窯で作られる。油と水と苛性ソーダを沸騰させ、ベテラン従業員が適時水を加えて温度を調節する。
凝固した石鹸は適当な大きさにカットされ、乾燥したら包装する。
天秤棒を担ぐ「山茶房」の従業員。三峡の古い通りで、昔ながらの石鹸売りの情景が再現されている。