戦略的な視点
淡江大学米州研究所教授・陳一新はこう指摘する。ホワイトハウスの報道官が台湾へのビザ免除措置に触れた時、他国からの意見はなく、北京当局との意志の疎通も必要なく、これは「国民の水準が一定程度に達した民主国家」であればビザ免除待遇が与えられることを暗示しているようである。
陳一新によると、台米の安全保障上の協力関係は馬英九総統の「三道防線」と「鉄の三角形」に欠かせない一環である。台米間の安全保障協力が継続する限り、我が方は中国大陸との間で、経済面と安全面の利益を享受できるのである。
「工商時報」紙の社説もこれに呼応する。――現在の「中米台」三者の微妙な相互関係において、中国大陸は、米国が台湾にノービザ待遇を与えることを「黙認」した。これは、台湾海峡両岸の競争および協力関係の中で、台湾の国際社会参画に確実に「活路」が開けていることを示している。つまり「一般市民の利益に直接関わる」事柄について、中国大陸当局は反対することは少なく、両岸は比較的調和のとれた状態が保て、それによって台湾は少なからぬ空間を得ることができる。
米国のビザ免除決定からも、馬総統が推進する両岸和平と「活路外交」の成果が見て取れ、また米国との関係がますます良くなっていることがうかがえる。
馬総統は就任以来、米国からの200以上の訪問団と会見している。昨年末から現在まで、米国からは国際開発庁のシャー長官やエネルギー省のポネマン副長官などの高官が盛んに来訪しており、米国が台湾を重視していることが分かる。台米間の国会議員の往来も非常に盛んだ。
4年前まで、台湾からは50の国・地域にしかノービザで渡航できなかったが、この4年でその数は急増し、これは世界中を飛び回る台湾のビジネスマンにとって大きな保障となる。便利なだけでなく、旅行文書が公式に保護されていることを意味するからだ。
「中華民国パスポート」の価値は高まり、現在は129の国や地域(世界の94%)にノービザまたはランディングビザで入国できるようになった。国際市民としての国民の態度が、世界への扉を開いたのである。
今年9月、馬総統を代表してAPEC首脳会議に出席した連戦・元副総統は、アメリカを代表して出席したヒラリー・クリントン国務長官と二国間会談を行なった際、ビザ免除措置の早急な実現を望むと伝えたところ、間もなく朗報が届いた。台米両国の首脳会談の再開にも大きな意義がある。