古いものがイノベーションの基礎に
中国の芸術史において、文人画は個人の感情表現を重んじ、こうした作品はプロの画家が細部まで神経を行きわたらせた作品より芸術性が高いとされてきた。
2015年9月から11月、台北市内湖区の耿画廊で開いた個展で、姚瑞中は「脳残遊記」と題して過去20年にわたる中国大陸と台湾の主要なパフォーマンスアートを振り返った。もう一つの作品「浮生若夢」は、結婚や娘の誕生など、自らの人生における8つの重要な瞬間を描いている。この二つの作品はいずれも芸術性の高さで知られる宋代の山水画の傑作を模写したものである。「私は天から降りてきたインスピレーションに頼ることはほとんどありません。創作にあたっては、まず研究し、一つの型を見出してから、それを改造して完成させていくのです」と姚瑞中は言う。
呉介祥は姚瑞中が模写した山水画の独特のスタイルについて、このような伝統水墨画の美学に挑戦する方法は、巨大な歴史遺産と向き合うことであるにも関わらず、小で大を制していると述べる。「これは芸術家としての歴史に対する嘲笑であり、彼自身の伝記でもある。歴史に関心を寄せる芸術家として、個人と大いなる歴史は協調してはならないものではなく、偉大なる文化遺産は挑発してはならないものではない」と言う。
姚瑞中は、彼の作品は台湾の1950年代末期以来の水墨画改革運動の一部を成すものだと言う。この改革の波は後に、古い芸術を改めて構築しなおし、2000年代中期に芸術家は数百年継承されてきた技法をイノベーションの基礎と見做すようになった。絵画があらためて芸術の主流となり「ハンドワークの価値が再び高まった」と姚瑞中は喜びをかみしめる。

1997年のベネチア・ビエンナーレで展示された姚瑞中の作品。

2014年、姚瑞中は再び台湾を代表してベネチア・ビエンナーレに出品した。

花長好:春一枝 インク/金箔/カンバス 2013 100×100㎝

花長好:一剪梅 インク/金箔/カンバス 2013 100×100㎝

「海市蜃楼」は2014年のアジア太平洋酒造協会基金およびシンガポール美術館APB基金主催芸術賞でピープルズ・チョイス賞を受賞した。

好時光:春風渡 インク/金箔/紙 2014 198×82㎝

浮生若夢 インク/金箔/紙 2015 474×321㎝