
台湾の田舎に行くと、こんなグループがあることに気づくだろう。勤勉なムードに満ちて高い成果を得ようと努力し、団結力がある。台湾の「農業生産販売グループ」と呼ばれる集団だ、彼らは新しい技術を進んで導入しながら新たな流通チャネルをも切り開く。

ハタの切り身。(張家昇提供)
南投県集集鎮タケノコグループ
中国の古典「二十四孝」の中に「哭竹生筍(泣くとタケノコが生えた)」という物語がある。孟宗という男が病気の母親にタケノコを食べさせようと竹林に行ったが、冬なのでタケノコは生えていない。それで泣いていると奇跡が起こってタケノコが生えてきたという話だ。名前の由来がこの物語からきている孟宗竹のタケノコは、立春前に収穫される、いわゆる「冬筍」だ。一方、緑竹のタケノコは温暖で湿度の高い気候でなければ育たないので、新鮮なものは主に毎年5~9月に収穫される。
冬に緑竹タケノコがないのは常識なので、南投集集野菜生産販売第2グループ(以下「集集タケノコグループ」)が冬に新鮮な緑竹タケノコを展示販売すると、政府の農業関係者でさえ、展示されているのはレプリカだと思ったという。
孟宗のように親孝行というわけではないが、集集タケノコグループは緑竹栽培の限界を打ち破って1年中収穫できるようにし、昨年は180トンのタケノコを生産した。グループリーダーの郭麗婷は、冬にタケノコが採れるのはメンバーの研究のたまものだという。それは、「偽の親竹」を使って生産時期を延ばすというものだ。
一般に1本の緑竹から6本のタケノコが生える(竹の地下茎から芽を出す)が、集集タケノコグループでは5本だけを収穫し、残した1本を「偽の親竹」とする。いわば代理母のようなものだ。その残したタケノコの先端部を切り落とし、2~3度叩くことでタケノコを木質化させ、その脇からの発芽を促す。「偽の親竹」は竹に成長せず、2代目、3代目のタケノコを生んでいくというわけだ。

台湾では「一にツバメコノシロ、二にマナガツオ、三にマダイ」と言われ、ツバメコノシロは最も愛される魚だ。小骨が少なく、肉質がきめ細かなためだろう。(張家昇提供)
冬にもタケノコを
郭麗婷は、「偽の親竹」の技術は複雑ではないが、気をつけなければならないことが多くあると言う。 例えば乾燥した冬は、「水で伸びる」と言われるタケノコの生育に適さない。集集には濁水渓からの灌漑用水があるので、特に冬にはタケノコを囲む溝を水で満たし、タケノコを冬眠させないようにしている。
台湾の緑竹タケノコの70%は主に新竹・竹北より北部で収穫されている。北部は雨が多く降るからだ。だが北部は冬に季節風が吹き、タケノコは最も風を嫌う。それに対し、南投集集は三方を山に囲まれ守られている。しかも1999年の921大地震の後に集集は地熱が2度上昇したうえに、紫外線防止の強力な黒いビニールシートで土壌を覆っているため、保温は万全だし、遮光効果でタケノコに苦みも出ない。郭麗婷は「つまりは『天時、地利(天候も場所も適している)』です」と短くまとめて言う。
集集タケノコグループは2020年、全国6000以上の農業生産販売グループが競う中、全国農業生産販売グループ「トップ10」に輝いた。受賞理由は主に「冬にも新鮮な緑竹タケノコを生産すること」で、農業専門家から絶賛された。

緑竹のタケノコは甘くて、きめ細かい食感が特徴だ。
破竹の勢い
実は、集集タケノコグループのタケノコ栽培経験年数は短い。果樹農家からの転向がほとんどで、かつては生産過剰で価格暴落というつらい経験を誰もがしてきたが、リーダーの郭麗婷の「出会い」に助けられるこことなる。
かつてはバナナ農家だった郭麗婷が、緑竹とのなれそめを語ってくれた。2018年に台南白河のタケノコ農家、張国禎に出会った際、地熱のある集集はタケノコ栽培に適していると勧められた。そこで夫の楊志琛とタケノコを植えてみたのだ。
1年間の「実験」中には、肥料を間違えて繊維の粗いタケノコができたこともあるし、逆境の中の方が芽を出すのではと竹を揺らすなどさまざまなことを試みた、と楊志琛は語る。郭麗婷は「瓢箪から駒が出たようなものかも」と笑う。思いがけず2018年の冬、本当に緑竹タケノコの栽培に成功したのだ。
冬にもタケノコが採れるということで、台北市農産運銷公司(以下「北農」)が買ってくれた。それを知った農業委員会農糧署からも、「過剰生産で収入減につながることが多いバナナやドラゴンフルーツを栽培するより、集集は緑竹栽培を始めたほうがいい」と勧められた。
「私たちのリーダーは包み隠さず、使用する肥料や細かい注意点について教えてくれました」と副リーダーの郭玉発は言う。
だが「商売の違いは山を隔てるほど遠い」という言葉もある。ゼロからスタートのメンバーは真面目に農業専門家の講義を受け、施肥管理を行なった。そして経験は浅いながらも独自の改良にも励んだ。その一つが上述の「タケノコを叩く」方法だ。郭玉発の説明によると、これまでの方法は古いタケノコの地下茎は取り除いて新しい竹を残すというものだが、ショベルカーで取り除いてもらうのに1回少なくとも6800元かかり、決して安くはないという。そばにいた唐慶煌も口をはさみ、「正直言って、私たちは怠けているのです。毎年取り除く必要がなく、8年ごとに1回やるだけでいい。農業経営の専門用語で言えば、投資収益率の向上ですね」と言った。
2018年12月設立の集集グループのメンバーは当初18人、栽培面積10ヘクタール余りで始めたが、全員に順調に収益が出て、やがて中寮や竹山からも参加者が増えて今やメンバーは33人、栽培面積は40~50ヘクタールに成長した。
かつてのタケノコ農家は、朝市で売るために夜中に収穫しなければならず、タケノコ採りは「幽霊との闘いだ」と言われたほどだった。だが集集タケノコグループは予冷処理を行い、早朝に収穫したものをコールドチェーンで輸送するので、消費者は新鮮で甘い緑竹を食べることができる。
郭麗婷は同時に収穫時期の調整も行っている。毎年5~7月の緑竹の最盛期には出荷を控え、それを過ぎて稀少価値が出た頃に出荷して、良い価格で売るのだ。「私たちのグループは実験と研究に意欲的で、しかも非常に団結しており、誰もがリーダーの言うことをよく聞いてくれます」と彼女は言う。
今年2月と3月、彼らの冬のタケノコは、北農で1キロ平均500~600元で、最高価格は1キロ890元をつけた。集集タケノコグループは竹を金に変えることに成功したと言えよう。

高雄市永安区水産養殖グループ

グループのメンバーにとって、蔡蘇麗華は養殖の経験や知識を授けてくれる専門家だ。(張家昇提供)
独自の道を
炎天下、高雄市永安区の海岸沿いにある埋め立て地まで行くと、潮の干満を利用した養殖池が見渡す限り広がっていた。ここは、ハタとツバメコノシロの重要な養殖場の一つだ。
水産養殖業は、労働集約的で高度な技術を要する産業であり、自然災害や魚病などの脅威にもさらされやすい。たとえ飼育に成功しても、養殖池ごと買い取る仲買業者によって低価格に買い叩かれてしまうことが多い。
漁業3代目の蔡龍彬とその妻の蔡蘇麗華は、そうしたことを特に強く感じる経験をしている。 1970年代から高価格のハタを飼育し始めたが、2005年に香港に輸出する海産物からマラカイトグリーンが検出される事件が起こると、1斤(600グラム)500元だった魚価が1キロ70元にまで下がってしまったのだ。天災や人災は漁業者にとって逃れられない宿命だと感じた。
ハタの価格暴落により、ツバメコノシロの養殖に切り替えた蔡蘇麗華によると、ツバメコノシロは暑さには強いが寒さには弱く、敏感な魚だ。例えば、犬の鳴き声や飛行機の音などが聞こえると驚いて餌を食べなくなる。中秋節に誰かが近くでロケット花火を発射すると、ツバメコノシロがみな死んでしまったという養殖場もあった。
何か独自の道を探さなくてはと、蔡龍彬と蔡蘇麗華は2018年にトレーサビリティ認証を申請した。彼らは永安初のトレーサビリティ認証を受けた養殖業者となり、輸出市場の開拓に乗り出す。
北米に輸出する透明な真空パックには生産販売履歴が記載されているのを見て、「アメリカの消費者は台湾に好印象をもっているのに、パッケージからは台湾産の魚であることが分からないのは惜しい」と助言をくれた貿易商もあった。

永安区水産養殖生産販売グループは、ブランド「TFish台潮魚集」を自分たちで生産販売する。(張家昇提供)
自社ブランドの生産販売
貿易商から提案されたり、長年にわたって魚価が買い叩かれてきたことも考慮して、彼らは2019年に「永安区水産養殖生産販売第9グループ」(以下「永安水産グループ」)を結成する。漁業2代目の青年たちを集めてブランド「TFish台潮漁集」を立ち上げ、自社生産販売の道に乗り出したのだ。
マーケティング担当で、「青年農家100人」に選ばれたこともある張家昇は、食品フェアやオーガニック・マーケット、ECプラットフォームにも参加したり、「台湾優良農家プロジェクト(TGA)」のサポートも受けて認知度を高めるなど、ブランドのために尽力した。しかも世界で通用する基準で魚を売るために、衛生管理のHACCP、食品管理のISO22000、対EU輸出水産食品取扱養殖場、ハラル認証など、次々と認証を申請し、アメリカのほか、オーストラリア、シンガポール、日本への輸出にも成功した。
蔡蘇麗華は養殖の経験や知識をメンバーに教えるほか、台湾肥料公司との協力で、水質や魚の胃腸を整えるプロバイオティクスを導入するなど、メンバーにとって重要な専門家だ。彼女はまた、ハタ、ツバメコノシロ、サバヒー、タマカイ、アカマダラハタ、バナメイエビなど、多様化戦略をとることも勧めている。メンバーは知識を共有しながらリスクの分散も行い、流通チャネルを割り振ることもできるので、もはや一人で業者と交渉する必要はなくなった。
張家昇はツバメコノシロの例を挙げる。かつては業者が養殖地に来てその場で量に合わせて価格を設定していたが、現在ではグループが飲食店や家庭のニーズに合わせ、14のサイズに分けて包装・販売している。100~500グラムの各種サイズのツバメコノシロをそろえており、食べ放題の店や日本料理店で焼きたてや蒸したてのものが食べられるようになった。
永安水産グループは、現在メンバー15名、養殖面積は45ヘクタール、年1700トンの水産物を生産している。近年はコールドチェーン技術が進歩し、消費者にも冷凍魚が受け入れられるようになったので、この2年間のパンデミックの間にも、同グループの宅配業績は逆に上昇した。現在では年間売上げは過去最高を更新、2億5000万元に達するなど、この漁村は輝かしい成績を収めているのである。

グループ・リーダーの蔡蘇麗華は、「青年農家100人」に選ばれた張家昇(左)にマーケティングを任せ、海外市場に進出した。

海水で養殖した魚は土臭さがない。

南投県集集生産販売グループでは、タケノコの輸送は高級魚並みに氷を敷き詰めた発泡スチロール箱を用いる。

集集タケノコ生産販売グループは実験や研究に意欲的で、リーダー郭麗婷(左から3番目)の指示にも進んで従う。

指導機関である「富山果菜運銷」協同組合は、緑竹を見栄え良くするための優れた洗浄・選別設備を提供している。

南投県集集鎮の竹林

「偽の親竹」を作る。