二大都市の微妙な関係
世界を見ると、台湾の台北と高雄のように、一つは首都、一つは全国最大の工業港湾都市という二大都市の競争は珍しくない。
日本では大阪人は東京人のスタイルが合わないと言い、フランスでは港湾都市マルセイユとパリの気質が合わないと言う。「マルセイユと高雄の人は似ています」と台湾在住フランス人のフェレーロさんは言う。どちらも港町らしく豪快で、何事も首都ばかりが注目されるのに不満を感じている。
しかし、中央政府も台北市も高雄市も、互いが主要なライバルではないことを認識しなければならない、と林祖嘉教授は言う。
世界の都市間競争に目を向けると、以前は国家競争力の評価をしていた「世界経済フォーラム」が2004年から都市競争力も発表するようになった。百万都市が密集する東アジアにおいて「中国の都市興隆が台湾の都市にもたらす影響」を林祖嘉教授は観察しており、2005年に初めて「両岸四地」を基礎に、華人圏の都市競争力評価を行なった。
「これらの都市競争において最も顕著な現象は代替効果を持つことです」と林教授は言う。例えば香港はすぐ隣に出来た深圳;港に貨物を奪われ、2002年に大打撃を受けた。また上海がアジア太平洋地域の金融センターとしての地位を高める中、香港と上海の金融業の関係も注目される。
香港は現在の地位を保てないことに不安を抱いているが、深圳;も決して安泰ではない。深圳;は当初「特区」に指定されたことで大きく発展したが、今では中国沿海都市の多くが開放されている。これらの都市は中央から権限を授けられ、税の減免や優遇などを次々と打ち出して企業を誘致しており、市長の一声で新たな開発区を区画できる。こうした「諸侯経済」の中では特区の深圳;も特別な存在ではないのである。
中国の新興都市に比べると、台北は大部分が市街地で、開発の余地があるのは南港と関渡の一部だけだ。将来的に基隆港、台北港、台北県の町村などと協力できるかどうかが競争力を左右する。
高雄港の鍵を握るのは自由貿易港区だと曾梓峰助教授は指摘する。自由貿易港区が予期した成果を上げていないのは、三通が実現せず、企業の意欲が低いこと。また小港空港の規模が小さくて国際便を増やせないことがあり、港と空港を一体化させることが必要だと言う。高雄港の貨物取扱量に標準コンテナ1000万個の限界があっても、数は問題ではなく、価値が問題なのだという。
港と空港を結び、三通が実現すれば、中国に投資している企業も一次加工品を台湾へ運んでさらに加工し、台湾から出荷することができる。そうなれば技術の流出が防げるだけでなく、地元にも経済効果をもたらす。これが本来の高雄自由貿易港区の計画なのである。しかし、台湾海峡両岸の敵意は解消せず、三通が実現しないため、成果も限られている。
文化は都市発展の力である。華人圏随一の自由で多様な創造力が台北に他にはない競争力をもたらしている。