革新的な教育を
進学のための詰め込み教育は時代に合わなくなり、政府の政策が変わるとともに、第一線の教育現場でも少なからぬ教員が変革に取り組んでいる。ただ、体制内の教員は学校の制度や既定のカリキュラムに従わなければならないのに比べ、体制外では臨機応変に創意を発揮できる。「学校の先生には既定のカリキュラムがあり、校外活動でも大勢の生徒に配慮しなければなりません。一方、私たちは野外の資源を用い、生徒は五感を通じて環境や街や人との関わりを感じ取ることができます。少人数制で、ボランティアに手伝ってもらうこともできます」と曾毓仁は言う。
「城市浪人」は体制外の利点を活かし、多くの教育者には思いもつかない新たな方法「城市浪人流浪チャレンジ・コンクール」を打ち出した。3人1組のチームで、1カ月前後の時間をかけて多数の任務を完了するというゲームである。任務完了時には文章や写真、映像などでその成果を記録する。その任務には「自己認識」「つながり再生」「冒険」「社会参画」の4つの内容があり、若者が自己探索し、異なる属性のグループを結びつけられるよう導く。2013年に初めて開催してからすでに6000人以上が参加しており、この体験型の企画は、産業界や海外の組織からも高く評価され、ボランティアの募集や企業の人材募集などにも活かされている。
2017年には生命保険会社の国泰人寿とともにイベント「101の職場体験」を行なった。これは体験型の適正試験のようなものと言える。250人の参加者が、保険会社やマスコミ、政府機関、大企業、中小企業、NPOなど45のさまざまな業種の職場で3週間をかけて任務に挑戦するという形で行われ、終了後に互いに感想をシェアした。これにより企業と若者の双方が適材適所の雇用を実現することができる。
「城市浪人」は体制外であることの優位性を最大限に発揮し、他の教育機構や海外組織と積極的に交流して新たな知識やアイディアを得ている。「チャレンジ・コンクールは長年の経験を経て、今では組織化してきましたが、新たな刺激を生むために毎年異なる要素も加えています」と言う。イノベーションはリスクを伴うが、恐れずに初心を貫くことで新たな世界が広がる。
生活は、さまざまなものがつながったネットワークの中にあり、教育はそうした物事への知覚と好奇心を育むべきである。
「城市浪人」という名称には、雲門舞集の作品「流浪者計画」への敬意が込められているが、その範囲と規模は国境を越えるものではなく、自分たちが暮らす都市とした。これは「遊学」体験のハードルを下げるもので、「都市全体が自分の教室」という考えである。チャレンジ・コンクールは都市ごとに行われるが、これは交通や時間のコストを削減することで、参加者の意欲を削がないためである。また、地域ごとの条件を考慮して任務の内容も決めている。管理ディレクターを務める簡以潔は、エリアごとに四大任務の他に特色ある任務が課されると言う。例えば高雄エリアの場合、必ず高雄港の歴史物語を発掘し、あるいは地元で文化的、歴史的に価値のある古跡を訪ねなければならない。少なからぬ学生は大学に通うために高雄に住んでおり、この任務によって地域との深いつながりを持てるのである。
張希慈(右)はメンバーに、異なる領域の人と積極的に交流することを勧める。これにより国際情勢への理解が深まり、さまざまなリソースを結びつけることができるからだ。(荘坤儒撮影)