基隆学の推進、地元に再び光を
故郷を知ろうという流れは、台湾で言う本土意識、つまり地元意識を生み出し、地元の再認識に繋がった。
1999年、基隆社区大学の李正仁講師は基隆学コースを推進し、現地の文化と歴史、産業を基隆住民に紹介していった。清の時代にあっては、基隆は台湾最初の鉄道と最大の港湾を擁していて、時代の先駆けとなった近代都市だった。その栄光も、基隆を迂回して台北と宜蘭を結ぶ道路が開通し、台北港との競争のために人口流出が続き、今では過去のものとなってしまった。
その栄光を呼び起そうと、李正仁は受講者と共に80年余りの歴史ある西三埠頭を訪れ、基隆河流域の原生種植物を探し求めた。15年にわたるこうした探索活動を通じて、基隆住民は故郷への自信を取り戻したのである。
台湾最南端に位置する屏北社区大学でも、地域のアイデンティティ崩壊の危機に直面していた。そのため、2000年の社区大学設立時には屏東学を提唱し、住民の故郷への関心を呼び起そうとしたのである。
この社区大学運営を任された大武山文教基金会は環境保護活動を長年行なっており、さらに当時の屏東では軽軌道鉄道、南回鉄道の建設が進められていたため、屏東学は環境保護の活動を通じて蓄積されていった。
社区大学では、2000年から毎年「屏東学フォーラム」を開催している。屏北社区大学の周芬姿校長によると、長年の努力の結果、現地の受講者や大学も屏東学に参加するようになり、テーマもリゾート観光や農業の革新など多様な方向性を有するようになった。
周校長はまた、編纂に8年をかけた『屏東県誌』が今年の夏に出版されると話す。屏東学の15年の成果を集結し、地域のNGO、文化歴史関係者、社区大学受講者等が共同で編纂に当ったこの『屏東県誌』は、ここ20年の屏東の地域運営や公衆衛生、環境保護の成果を記録するもので、「地元住民が自身の物語を語り、社会の力を現出させたのです」と周主任は語る。
高雄学のビジョン創造
地方学は、地方の発展へのビジョンと行政の青写真を提供することができる。
「地方学は未来の創造です」と、高雄第一社区大学の張金玉主任は言う。2000年に、高雄第一社区大学は工業都市という高雄の特性に対応し、環境保護を高雄学の重要な要素に組み込んだ。たとえば、自然保護サークルは環境保護団体の地球公民協会と協力して左営地区の洲仔湿地の保護に成功し、高雄市最初の都市部にある湿地保護公園を設立することができた。
最近では、二仁渓や後勁渓などの汚染をモニターするとともに、受講者やボランティア、環境保護団体を集めて、前鎮河の浄化を行った。前鎮河は長年にわたり工業廃水や生活廃水に汚染されて悪臭がひどく、黒竜江と呼ばれていた。これに対して、自然生態クラブのメンバーが調査を行い、一般住民を巻き込んで、前鎮河浄化のための計画を作成したのである。
「地方学は単なる知識伝達ではなく、過去に学び、現在を改善し、未来への想像を構成するものなのです」と張主任は語るのである。