ラストマイルはインテグレーション
インテリジェントビルの運営も「探知→表示→連動」のプロセスで行なわれるが、中でも探知のシステムが最も重要である。建築物の中に設置された各種システムは、最終的に一つのプラットフォームに統合しなければならない。数十ものシステムを統合するには千以上のノードをつながなければならないのである。
1992年に創設された永録自動化公司(Lucon Automation)は、国内のインテリジェントビル業界の老舗である。総経理の陳勇誠はかつて台湾初のインテリジェントビル——台湾電力総管理処ビルのモニタリング&コントロールシステムのプロジェクトに関わった経験がある。
以来、Luconの実績としては国家表演芸術センター両庁院、台北栄民総病院、成功大学医学部付属病院などがある。2018年には「アジア太平洋インテリジェント‧グリーン‧ビルディング‧アライアンス‧アワード」のシステム部門でプラチナ賞を受賞した。さらに注目に値するのは、同年に同賞デザイン部門でプラチナ賞を受賞した群光インテリジェントグリーンエネルギービルと、既存建築物改造部門でプラチナ賞に輝いた台湾電力総管理処ビルのいずれもLuconのモニタリング&コントロールシステムを使用していることだ。これについて、Luconのアシスタント‧ヴァイス‧プレジデント林翠玲はこう話す。「群光インテリジェント‧グリーンエネルギービルはゼロからの案件で、モニタリング&コントロールのノードは2万4546ヶ所もあり、非常に難しい仕事でした。一方の台湾電力ビルの方は、セントラル制御システムの更新で、十数年来ずっと当社が担当してきたので、こちらも特別な意義があります」
台湾におけるモニタリング&コントロール技術の萌芽期からこの分野の研究を進めてきた陳勇誠は、その重点をこう解釈する。「私たちの強みはインテグレーションにあります。インテリジェントビルのモニタリング&コントロールシステムでは数十のシステムを統合しなければなりません。例えば、火災報知システム、冷却水循環装置システム、デジタル電気メーター、無停電電源装置、ドアロック管理システム、パブリックインフォメーションシステム、クラウドエネルギー管理システムなどがありますが、これらはそれぞれメーカーが異なるので、システムもインターフェースや規格も違います。こうした状況で、すべての情報を一ヶ所に集める方法を考えなければ全体的な連動が取れないのです」例えば、以前はつながっていなかった火災報知システムとモニタリングシステムを今はつなぐことができる。火災警報が鳴った時、モニタリングカメラがその発火点の映像をとらえ、誤作動ではないかどうかをスマートに判断できるのである。
複雑な原理だが、インテリジェントビルの実際の運営を見てみようと訪ねると、そこにはごく普通のコントロールルームがあるだけだ。林翠玲は、このモニタリング&コントロールシステムをオートフォーカスカメラに譬えて説明する。すべてはプログラムに入っているので、絞りやシャッタースピードを自分で設定する必要はないのである。とても分かりやすい喩えだ。
「インテリジェントビルは一つのサービスシステムです」と温琇玲は言う。テクノロジーが発達するにつれ、今後はさらに多くの新たな技術が建築物にも導入されていくことだろう。ただ、最終的に人とつながるワンマイルは、使用者の立場に立った設計になっていなければならない。人にやさしいインターフェースがあってこそ操作しやすく、スマートでサステナブル、省エネという未来が開かれるのである。
デモサイト内のグリーンエネルギー生活体験コミュニティでは、発電、蓄電から電力使用までを最適化し、ネット‧ゼロ‧エネルギーを実現している。(工業技術研究院提供)
家電メーカー禾聯(Heran)の蔡柏毅‧副董事長は早くからスマート家電の潜在力に目をつけ、IoTを導入してスマート市場に進出し、未来の生活のビジョンを描き出している。
Lucon Automation(永録自動化公司)の陳勇誠‧総経理は、国内のインテリジェントビルのモニタリング&コントロールシステムの開発に取り組んできた。台湾初のインテリジェントビルである台湾電力総管理処ビルのプロジェクトにも参加してきた。
台湾電力総管理処ビルは2018年に「アジア太平洋インテリジェント‧グリーン‧ビルディング‧アライアンス‧アワード」の既存建築物改造部門でプラチナ賞を受賞した。
インテリジェントビルの手法を用いることで、建築物をサステナブルな省エネの方向へ向かわせることは今後の趨勢である。(工業技術研究院提供)