何でも自分でDIY
「科学的な方法で紙を研究するというのが、王国財さんの魅力です」と、紙を探して親しい友となった侯吉諒さんは言う。元々森林学科の出身の王国財さんは、厳格な科学的訓練を受けているし、自分自身の興味もあって、長年各種の書画用の紙を収集し、書家や画家とも意見を交換してきた。しかも国外や、林業試験所の同僚とも技術交流していて、すでに蓄えてきた科学的な製紙技術は他の人が及ばないものがある。
だからこそ、古代の技術を正確に現代の材料や技術に翻訳して転換できるし、そこから一歩進んで古代の観念や、技術、材料では克服できなかった多くの問題も、現代の手法で製紙技術の改善することにより解決できるようになったのであろう。
王国財さん本人に、どうやって古代の紙の復元に成功したのか聞いてみた。
「自分より学問のある人はたくさんいますが、私のように何もかも自分の手で試してみるということがないからでしょう」と、台湾海峡に浮かぶ辺境の馬祖島の生まれで、小さい頃から三食もおやつもサツマイモという質素な生活で育った王さんは話す。
製紙の原料の繊維を取り出すには、手で楮の皮を叩かなければならない。楮の皮の繊維は長く、機械を使うと絡まってしまうので手作業に頼るしかなく、叩くだけで1日かかる。以前の実験室にはクーラーがなく、加熱にガスを使うと汗だくになった。やっと紙を漉き終ってみると、さして丈夫でもない王さんは病気になってしまったのである。
「実際の操作過程でも多くの問題が発生し、それを辛抱強く一つ一つ研究し改善していくしかありませんでした」と話す。
磁青紙を作っていたとき、実験室では何の問題もなかったのに、製紙の現場にくると、紙漉きの機械が動き出した途端に猛烈に泡が出てきて、制御できなくなってしまった。こんなことが何回か続いたのである。
これにはずいぶん考え込んだが、やっと原因が分った。紙料液には界面活性剤が含まれているため、紙漉き機が液を急速に掻き混ぜると空気が大量に混ざりこみ、泡が急激に出てしまうのであった。2ヶ月を費やして、やっと薬品添加の順番を改良し、理想的な状況を作り出したのである。
名文は永遠に残るが、紙の命には限りがある。いかにして紙の寿命を延ばすかは、現代の製紙専門家の課題でもある。(故宮博物院提供)