移住労働者文学賞
2012年5月1日のメーデーに『四方報』は時報出版社と共同で、『四方報』に掲載した文章の一部を書籍『逃:われらの宝島、かれらの牢』として出版し、ベトナム語版も同時出版した。同年「開巻好書賞」の「審査員特別推薦」を獲得した。「外国人労働者が自ら声を出す」本は、台湾文学に新たな創作の源を加えることになった。以降、台湾文学の系譜に東南アジアという支脈が生まれたのである。
『逃』に続き『四方報』は時報出版社と再び共同で『逃:われらの売買、彼女の一生』を出版した。『四方報』に掲載された国際結婚の手記が収録されている。記者やボランティアの記事もあれば、国際結婚を経験した人が投稿した原文を中国語に翻訳した文章もある。最新計画では、新住民の子どもの成長について『茫:われらの境界、かれらの涙』を出版することになっている。
移住者文学書を続けて出版した後、張正は2013年に『四方報』を離れた。だが相変わらず熱心にリソースを探し、2014年には第一回「移住労働者文学賞」を開催した。第二回「移住労働者文学賞」は2015年3月から作品を募集している。「今回の最優秀賞は賞金10万元ですよ」張正は文学賞が一定規模の賞金を出すことで、より多くの移住労働者を呼び込みたいと願う。
『四方報』創刊7年の後、張正は妻・廖雲章と仲間と共に、台湾初の東南アジア語TV番組『唱四方』を制作している。カメラをかつぎ、街で東南アジアの素人歌手に突撃する。『唱四方』は「社会的企業イノベーション起業学会」の推薦を得て、DBS銀行の助成で継続することになった。
張正にはまた新しいインスピレーションが生まれた。「四方文創」を設立し、東南アジア書店「望見書間(SEA Mi)」を出店する。出店するのは桃園駅裏、桃園の外国人労働者と外国人配偶者が集まる場所で、2015年3月29日オープンの予定である。「望見書間東南アジア図書文化クリエイティブスペース」は東南アジア言語の書籍を展示する場所であり、東南アジア書店でもある。「東南アジアのアートスポットにもなる」書籍だけでなく、移住労働者や外国人配偶者のハンドメイド商品や絵画などのアートも陳列する。
東南アジア言語のハイクオリティショップ
「望見書間」は図書館に似ている。今のところ書籍は販売せず、貸し出しを行う。「望見書間」の蔵書充実のために、張正は「自分が読めない本を台湾に持ち帰ろう」と呼びかける。東南アジアに旅行や赴任、出張する人に、現地で本を買って台湾に持ち帰ってもらう。東南アジアの文字で書かれた本なら、ジャンルは問わない。新刊でも古本でもいい。「現地では安くても、飛行機で台湾に運べば、東南アジアの移住労働者や配偶者にとってはまたとない大切なギフトです」中国語が全くない場所で中国語の本を見つけたら、とりわけ大切にするのではないか。それがチラシ一枚だとしても、繰返し読むだろう。
本を寄付しやすいように、複数の独立書店や、外国人労働者が多い地域の文房具店、飲食店、天下雑誌の図書巡回車と協力し、本の受領ができるようにした。詳しい情報は「望見書間」のサイトhttp://www.seami.com.tw/で調べられる。
2006年の『四方報』創刊以来、張正の「東南アジアンドリーム」はふくらみ、広がり、深さを増した。歩いてきた道のりを振り返り「東南アジア出身の移住労働者である『彼ら』のためでなく、自分のためにしてきたのです。『彼ら』に幸せになってほしいのは、自分が幸せになりたいから、私が暮らす台湾が、もっとよくなってほしいからです」と語る。