一歩ずつ始めたホテル経営
長年アメリカに暮らす黎淑瑛は、本来は舞踊家で、ヒューストンでダンス教室を開いていた。1988年にアメリカが不況に陥った時、夫の許文忠とともに投資のチャンスととらえ、有利な価格でホテルを買い取り、二人で経営を始めた。
ホテルを買い取る前、夫妻は3カ月にわたってそのホテルの外で通行量などを観察して顧客数を見積もり、ダンス教室を閉鎖して全力でホテル経営に乗り出したのである。
素人の黎淑瑛は、自らフロント業務や部屋の清掃を行ない、謙虚に従業員から学んでいった。創業当初、許文忠は会社勤めを続けながら家計を支え、黎淑瑛がホテル経営を一手に担った。
景気が回復すると、夫妻が経営するホテルを投資家が高値で買い取った。二人はこの資金を元手に次のホテルを購入し、経営を拡大していく。3軒目のホテルに投資した時、許文忠は会社を辞め、夫婦でアライド・ホスピタリティ社を設立し、黎淑瑛が副総裁に就任した。数学を専攻した許文忠は財務分析が専門で、運営管理を担うこととなった。笑顔を絶やさない黎淑瑛はPRとマーケティングを担当し、二人で力を合わせて現在のホテルチェーンへと拡大してきた。
夫妻は既存のホテルを買収するだけでなく、ゼロからの開発もしてきた。最初に立ち上げたのはヒルトン・ガーデンで、2004年のオープン以来、周辺に発展をもたらし、大型のショッピングモールも進出してきて、何もなかった土地が国際的なビジネス街へと成長した。
夫妻が巨額を投じて築き上げたホテル王国は、多数の雇用を生み、地域の行政や企業とも良好な関係を維持している。華僑活動にも積極的に取り組み、我が国の外国駐在機関にとって力強い後ろ盾となっている。

優しく親しみやすい黎淑瑛(前列右から3人目)はホテル事業を成功させるだけでなく、慈善事業や華僑活動に熱心に参加し、華冠賞を受賞した。