ソフトパワーで東南アジアと交流
充実した訓練を行なってきた梅洲地域の自主防災隊は、水利署の「水害自主防災地域」コンクールにおいて3年連続で特優の評価を受けた。その後、呉文龍はすでに十分に訓練されているので、コンクールに参加して名誉とリソースを独占するべきではないと考え、参加を放棄した。
しかし、対外的な交流は減っていない。ここの防災隊は台湾各地のコミュニティと交流し、また学校も訪れて小学生や大学生と交流している。
2018年、政治大学東アジア研究所の楊昊教授らの協力の下、梅洲地域は「アジアコミュニティ災害対応レジリエンス」計画を提出し、千に上る計画の中から選ばれて、アメリカ国務省の同窓生連結イノベーションファンド(AEIF)から資金を受けられることとなった。
楊昊によると、梅洲地域の事例は、防災専門家から「手本として教科書に載せられる」と評価されているが、年配の隊員が高齢となってリタイアし、経験が引き継がれないおそれもあるため、この計画資金は、経験のデータ化と継承に使っていきたいという。
台湾アジア交流基金会CEOでもある楊昊は、国の戦略という角度からこうも説明する。地理や気候といった客観的な条件で見ると台湾は東南アジア諸国と似ているところが多く、水害や地震、台風などにおける梅洲の経験はこれらの国々とシェアする価値がある。
蔡英文政権が推進する「新南向政策」においてもコミュニティ同士の交流やつながりが深まれば「人を中心とする」政策の精神にもかない、国と国との垣根も乗り越えやすい。
毎年、多くの団体が梅洲を視察に訪れる。台湾だけでなく、タイやミャンマー、フィリピンなどの専門家との交流もある。
「経済貿易面での投資には大きな資金が必要ですが、コミュニティのソフトパワーを活かし、互いに経験を学ぶことができれば、台湾社会の熱意と思いやりにも触れてもらうことができます」と楊昊は言う。
人と人とのネットワークを重視するアジアにおいて、梅洲地域は「もてなし好きの台湾」の力も発揮しているのである。
拷貝.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
訓練を受けた隊員たちは台風の動向を分析し、臨機応変に対応する能力を持つ。
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
激しい風雨の中、台風による雨量を確認する呉文龍。 (梅洲地域水害自主防災隊提供)
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
台風の暴風で街路樹が倒れても、外部に支援を要請することなく、自主防災隊が倒木を処理して道路を復旧させる。(梅洲地域水害自主防災隊提供)
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
梅洲地域は防災面での成果から、東南アジアの専門家との交流も多い。
.JPG?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
成熟した防災経験により、梅洲地域は米国務省の同窓生連結イノベーションファンド(AEIF)から資金を得ることができた。(楊昊提供)