ビジネスも旅行も便利に
プリント基板のODM生産を行なっている耀騰公司の游孟儒・営業主任によると、西欧市場は成熟していて競争が激しく、西欧の「工場」としてはロシアに近い東欧に潜在力があるという。そこで2010年、同社は成長著しい東南アジアとロシアと東欧の市場をターゲットに定め、以来、同社はチェコやポーランドなどの見本市に積極的に出展している。
その話によると、商談には効率とフレキシビリティが求められるため、ビザ申請などが遅れるとスケジュール全体に影響してしまい、ビジネスにも支障をきたす。特にロシアはビザ手続きが繁雑で、受け入れ側の招待状が求められ、資料の変更などがあると、申請し直さなければならず、商談にも影響してしまう。それに比べ、欧州の国々へはビザ申請の必要がなくなり、見本市出展なども非常に便利になったという。
旅行業界もビザ免除措置の恩恵を受けている。易遊網(ezTravel.com)の陸悦寧・マーケティングマネージャーによると、EUへのビザが不要になってから、欧州へ旅行する人は毎年安定的に5%増加しているという。台湾からは距離が遠く、ツアー料金も高くなる欧州は、台湾人にとって主要な旅行先ではないものの、アイスランドでのオーロラ観賞といった特色あるツアーなどは人気がある。
その話によると、以前は3~5日かかっていたビザ申請の手続が不要になったおかげで、ツアーに申し込んでいながらビザが出発に間に合わないという事例もなくなった。これに加え、最近はユーロも値下がりしているため、易遊網ではシニアを対象とするバスツアーや自由旅行なども打ち出している。
ウェブサイト「欧州自助旅行充電站」を運営する林鳳声は欧州旅行の経験が豊富だ。1992年に個人旅行に行って以来、欧州の文化や雰囲気に魅せられ、これまでに21カ国を旅してきた。2000年に欧州旅行の経験をシェアするために、ネットフォーラムやブログ、フェイスブックを立ち上げて旅行好きの人々と交流している。
その話によると、旅行会社が手続もすべて代行してくれるツアーに比べ、何もかも自分でやらなければならない個人旅行の方が、ビザ免除措置の恩恵は大きいという。「以前は、ビザ取得に早くて3~5日、長ければ1週間かかっていましたが、今は行きたい時にすぐに出発できます。ビザの期限などを考えながらスケジュールを調整する必要もなくなりました」と言う。
ビザが免除されたことで、これまでは訪れる人の少なかったバルカン半島などへ行く人も増えてきたという。林鳳声によると、一部の国には中華民国の代表事務所もなく、台湾のことが知られていないため、ビザ申請は困難だったという。2006年にクロアチアへのビザを申請した時は、まずオーストリアの友人にパスポートを郵送して申請を代行してもらい、さらに保証のために友人に宿泊証明まで出してもらわなければならず、手続に半月もかかったという。
ビザが不要になった今は、従来は旅行先として訪れる人の少なかった地域も注目されるようになり、ネット上でも話題になっているという。林鳳声もこの1~2年のうちに、バルト海に面したエストニアなどを訪れたいと考えている。
次の目標:欧州との経済協力協定
EUによるビザ免除措置によって、台湾と欧州の間では教育や社会など各方面での交流も増えてきた。林永楽部長は、最終的にはEUとの経済協力協定(ECA)や二国間投資協定(BIA)などを結びたいと考えている。ECAやBIAの締結までにはまだ努力が必要で、現在は積み木を重ねるように段階的な任務を進めている。
外交部欧州司の張銘忠・司長によると、ビザ免除措置が実施された今、次の目標は、EUおよびその加盟国において、我が国をFTA交渉の対象国とするよう働きかけていくことだと語る。現在すでに、BIAを足掛かりにしていくことで合意が得られており、年内にEUとの第一ラウンドの交渉を開始したいと考えている。
台湾と欧州との間では、さまざまな面での交流が始まっている。ドイツ、イギリス、アイルランドなど欧州8ヶ国とはワーキングホリデーに関する協定が交わされ、ルクセンブルクやオーストリアとは二重課税回避に関する取り決めも交わされた。この他にも、科学技術や教育、クリーンエネルギーなどの分野で50項目近い公式の取り決めが交わされている。
EUによるビザ免除実施から4周年を迎え、社会や経済、文化などの領域で台湾と欧州の交流はますます盛んになっている。今後のさらなる発展に期待したい。