その空間には、かつて知の巨匠や才能あふれる芸術家が集い、あるいは国家百年の大計が議論された。
時代は流れても、旧宅の庭の緑は手入れが行き届き、今も文人が集い、静かなたたずまいは変らない。そこに身を置き、先人が敷いた歴史の礎に思いを馳せ、在りし日をしのべば、その生命の輝きや壮大な夢、繊細な感情までもがよみがえるかのようだ。
旧宅の古い空間を見つめていると、時間が逆戻りしていく。ドアが開けばそこには先人の才華が光り、窓を閉じれば往年の威厳が垣間見え、廊下を曲がれば当時の苦難がしのばれる。黄ばんだ写真、古びた道具、そして後世に多大な影響をおよぼした著書や作品を一つひとつ見ていくと、思わず時の流れの痕跡に手を触れてみたくなる。
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光華のシリーズ記事「地方めぐり」では今月は台湾の北端、基隆をご案内する。山を背にしたこの港町は、数世紀にわたって貿易、海運、軍事の要衝として北台湾最大の繁栄を見せてきた。そして今、歴史的空間や文化的記憶を点から線、さらに面へとつないで2軸、3基地へと展開し、歴史シーンを再構築して新たな華やぎを生み出そうとしている。
「美術と工芸」では、世界的な金工アーティストの阮文盟をご紹介する。その金属工芸は世界で高く評価されているだけではない。阮はそれを通して黙々と民間外交に取り組み、中華民国台湾を世界に紹介し続けている。
今月号の「東南アジアからの風」では、インドネシア、ベトナム、タイの台商総会(台湾商工会)会長̶̶周宗和、謝明輝、劉樹添に起業から成功までを語っていただいた。彼らはビジネスで成功しただけでなく、慈善活動や教育、台湾企業へのサービスや現地当局との協力にも力を注いでいる。
「トレンド台湾」では、映像による国民外交をご紹介する。台湾の魅力をとらえたショートフィルムを一般公募し、それを通して世界に台湾をアピールしていくという活動である。
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大いなる歴史の中にあって追想は尽きないが、私たちはそれを未来へとつないでいかなければならない。
2017年も励まし合い、手を取り合って歩んでいきたい。