台湾の発展経験を共有
中国信託ホールディングスの首席エコノミストで、APEC研究センター元ディレクターの林建甫氏は、世界をリードする台湾の情報技術分野と、中小企業の発展経験こそ、我が国がAPECにおいて各国と共有すべき重要ポイントだと語る。
林建甫氏はデジタル・テクノロジーを例に挙げる。世界的なデジタル関連の議題に対応するために、APECのビジネス諮問委員会(ABAC)は2018年にデジタル・イノベーション作業部会(DIWG)を設置したが、その初代の作業部会長は我が国代表のABAC委員でPChome董事長の詹宏志氏が務めたのである。
その詹宏志氏の働きかけにより、台湾とパプアニューギニアが共同開催する「第1回デジタル・イノベーション・フォーラム」が台北で開催され、詹宏志氏は作業部会長として、世界的に活躍する巨頭を台湾に招いた。エストニアのトーマス・イルヴェス元大統領、ウィキペディア創設者のジミー・ウェールズ氏、Skype共同創業者のジェフリー・プレンティス氏などである。このフォーラムは「ABCDE」(AI、ブロックチェーン、クラウド、データ、エコシステム)をテーマとし、世界に台湾のデジタルテクノロジーの実力を示すこととなった。
「中小企業に関する分野でも、台湾はAPECで積極的に活動しています」と林建甫氏は言う。中小企業は雇用機会を創出する経済発展の支柱でもある。そこで台湾は2003年から現在まで、毎年APECのプラットフォームにおいて中小企業関連の提案を行ない、国際会議を開いている。その中で、ECプラットフォームやベンチャーキャピタル、アクセラレーター、デジタルエコノミーなどの分野における中小企業の力を示し、APEC首脳会議や閣僚会議においても高く評価され、多くの提案が採択されている。
30年来、APECが扱ってきた議題の範囲は非常に広く、そのため我が国でも最も多くの省庁が参加する国際組織となっている。当初、台湾からは10余りの省庁が参加していたが、現在は60余りの公的・私的部門が参画している。
ABACに参加する詹宏志氏の働きかけにより、2018年、台湾は第1回「デジタル・イノベーション・フォーラム」を開催し、世界各国から巨頭を招いた。写真左から、ウィキペディア創設者のジミー・ウェールズ氏、台湾ボッシュのマネージング・ディレクター、バーンド・バーキー氏、Skype共同創業者のジェフリー・プレンティス氏、GogoroCEOの陸学森氏。(中央社提供)
我が国を代表してABAC(APECビジネス諮問委員会)に参加するクアンタ・コンピュータの張嘉淵CTO(右)と、ABACデジタル作業部会(DWG)の部会長、カナダのジャン・ドゥ・シルヴァ氏がオンラインフォーラムの司会を務める様子。(外交部国際組織司提供)
APEC研究センター元ディレクターの林建甫氏は、アメリカが「インド太平洋戦略」と米中貿易摩擦を重視する流れの中で、台湾にはCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)に加盟できる空間があると考える。