豊かさを秘めた舞い
レッスンでは庭莉さんは厳しい。あらゆる動作で正確さを要求する。「バリの伝統舞踊は代々継承されてきたもので、演目ごとに決まった振付と衣装があります」立ち姿や体のくねらせ方、そして視線まで、厳しく指導することで、バリ舞踊の美を感じてほしいと彼女は考える。
バリ舞踊を習い始めた人にとって難しいのは、動作を音楽に合わせることだ。バリ伝統音楽は拍子が明確でない。打楽器ガムランに合わせて頭を振るほか、視線、手指、首、足の動きを合わせる音はそれぞれ異なる。幼い頃から聞きなれている庭莉さんは、音楽を聴くだけで体が自然に動くが、初心者の場合、拍子に集中すると動作が遅れる。マスターへの道は、とにかく繰り返し音楽を聴き、慣れ、体に覚え込ませることだ。
衣装にも庭莉さんはお金をかける。バリ伝統舞踊の衣装は、赤地に金箔模様の入ったものが多く、ほかにも冠、首飾り、腕輪、腕飾りなど、演目によって衣装も異なるため、人数が多い踊りの場合、衣装代も高額になる。だが、すばらしい舞台になるためにと、彼女はバリのウブドまで行って、市場でこれらを買いそろえる。
女性の優雅さが最も感じられるレゴン舞踊は、バリ舞踊の基本と言えるもので、他の舞踊はすべてレゴンの基本動作から派生したものだ。かつてレゴン舞踊の踊り手は初潮を迎えていない少女で、しかも宮廷で舞うものと決まっていた。だが政治体制が変わり、観光業の発展も加わって、こうした決まりはすでにないばかりか、今や多くの人がこの優美な舞踊を学べるようになった。目や心でバリ舞踊の良さを感じ、その奥深さをもっと台湾の人に知ってもらいたい、と庭莉さんは願っている。

娘の李佳玲さんは中学の頃から母親にダンスを習っており、今は李庭莉さんと一緒に舞台に立てるまでになった。