産学のプラットホームを
台湾科技大学は、韓国のサムスン・アートデザイン学校やアメリカのアート・センター・カレッジ・オブ・デザインの方法を参考に、今年「クリエイティブデザインセンター」を設立した。デザイン実務教育を強化して国際デザイン研修などを行ない、また産業界の協力先を求めて、先端コンセプト(電子ペーパーなど)や文化クリエイティブ製品の開発を行ない、学外の人材を講師に招いている。
その講師の一人、台湾科技大学卒業生で26歳の陳彦廷は昨年ニューヨークのプラット・インスティテュートで修士の学位を取ったばかりで、現在は大学2年の「クリエイティブ企画」の授業を行なっている。また産学協力プラットホームの構築も担当しており、学生が創意と商品化の間に接点を見いだせるようアドバイスしている。
陳彦廷は台湾科技大学時代から今までに国際デザイン賞を80も取っており、今年は一人でiF賞コンセプト部門を3項目も受賞するという記録を打ち立てた。まさに「受賞の達人」である。
クリエイティブデザインセンター設立後、最初に打ち出された商品は、昨年アメリカのIDEA賞を取った易倒冠(In Out Bottle)だ。これは自由に凹凸させられるシリコンゴムの蓋がついた容器で、穴が開けられており、軽く押すだけで砂糖や塩を振りかける口になるというものだ。
この作品で受賞した陳彦廷は台湾で特許を取り、その費用4万元は学校が全額支援した。商品化に当ってはメーカーが製造と販売を担当し、デザイナーは売上げに応じてロイヤリティを受け取る。
「コンセプトデザインから商品になるまで、すべてがまったく新しい学習体験でした」と陳彦廷は言う。製造工程に触れてはじめて食用シリコンゴムの種類の多さを知り、プリントの色数によって効果と原価が違うことも知った。シリコンゴムの厚さなども幾度も調整し、最も使いやすいものを作った。
陳彦廷がiF賞とレッドドット賞の両方を受賞したLetter Cuttingという切り紙のポスターや影像作品は、ローマ字と中国伝統の切り紙細工を組み合わせたもので、独特の美感があり、メーカーからはこれを使って漆器の装飾品を作りたいという申し出があった。
前述の「平衡杖」を設計した范承宗と、大学時代の友人で今は台北科技大学修士課程に学ぶ王伯晋が共同でデザインした「巣」という作品は、磁石を組み込んだ卵型の置物で、クリップを吸いつけて収納することができる。
今年のiF賞コンセプト賞を取ったこの作品はシンプルで愛らしく、すでにメーカーによる発売が決まっている。
商品化と市場の試練は長い戦いであり、デザインの実力も商品に形を変えなければ利益は得られない。受賞後の次なる戦いに向けて、さらなる努力が必要となる。
商品化される台湾科技大学学生の巣キッチン湾科技大学クリエイティブデザインセンター提供)
学生たちが受賞する作品のコンセプトは創意に満ちているが、その後、商品化されて世に出ていくものがどれだけあるだろう。これは世界的なデザイン賞を取れるようになった台湾の次の課題である。
商品化される台湾科技大学学生の巣キッチン湾科技大学クリエイティブデザインセンター提供)
台湾科技大学の学生が設計した伸縮性のある椅子は商品化に成功し、2009年には従来の段ボールより耐水性の強いクラフトペーパーの作品も発売した。