雑木林の実践
2002年、廖偉立は「雑木林」という考えを打ち出した。ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界に位置する台湾では、豊かな植物や林相、生態に恵まれている。その多様な生命が共存する景観は、寒帯や温帯の単一林相の地域とは大きく異なる。民族的に見ても、台湾は移民国家であり、さまざまなエスニックの人々が一つの島に共存共栄していて、生命は多様性に富み、それこそが台湾らしさを形成している。
こうした多様性と異質なものを受け入れる雑木林理論が建築にも応用されている。「私は、自分が建てた建物が一目瞭然なものではないようにしています。空間に入った時に、道に迷ったり、探索したり、経験したりできるものであってほしいのです」
素材の面では、「私は単一の素材は使いません。これも雑木林の理念からくる考えです。この建物にはどのような構造が必要かを考え、さまざまな材料を使います」と言う。彼の作品では、台湾伝統の赤レンガや光を反映する打ち放しコンクリート、金属板、さまざまな集成材、そして屋外の風景を取り入れるガラスなどを用い、それらが建物の表情を作り上げる。
礁渓教会の歴史は100年になり、廖偉立は二代目の古い建物を新しい教会の中にはめ込んでいる。古い教会の「礼拝堂」という三文字が刻まれた額は聖堂の入り口にかけてある。古い木の窓枠も残し、聖堂両側の壁にかけて光と影を通す。「建物は時代の意義を示しており、古いものを受け継いでいくことは重要です」
さらに、北緯23.5度の陽光とさまざまな季節の風が挙げられる。徳光教堂の聖堂に座っているとき、あるいは礁渓教会の入り口にいるとき、建築家が光と風を素材として建築に取り入れていることが感じられるだろう。そのため、時には外の虹が壁に映ったり、十字架が逆さに映ったりするなど、聖と俗とが入り混じる時間を感じることができるのである。
廖偉立に、建物のどこに台湾を見るべきかと問うと、これという記号は限られており、時代の意義も色褪せてくと言う。だが、台湾の雑木林は台湾の地理と文化のユニークさを反映し、多様なものが生命力に満ちた姿で共存している。それは庶民の生活エネルギーを示し、それぞれが主張する喧噪こそ台湾らしさなのだという。
光は物質性の中で最も神に近い存在だと語る廖偉立は、信者があらゆる場所で神と出会えるようにしている。
救恩堂の屋上にある礼拝堂は、台湾によくある違法建築のように見えるが、周囲の活力に満ちた乱雑な街並みの中で個性を主張している。