教育から全体を変えていく
黄鈺雯は、政治に関わるさまざまな実習を経て、多くの問題が系統的につながっていることに気付いた。そこで教育を通して解決することが必要だと考えるようになり、DFC Taiwanの活動に参加することにした。生活の中で発見した問題を、子供たちにデザイン思考を通して解決させるという仕事である。
「これまで国際関係を学ぶ中で受けた訓練は、今も役に立っています」と黄鈺雯は言う。学生時代に大学を代表して海外からの来賓を接待したり、多くの会議に参加したり、また米国在台協会(AIT)の高雄事務所で実習し、上司のために面会対象の資料を集めたり、重要な祝祭日のイベントの際に貴賓と連絡をとるなどしてきた。これらの経験の中で、彼女は自分には「広報」にふさわしい特質と能力があることに気付いたという。そこでDFC Taiwanに入り、広報のマネージャーを務めることとなった。
DFC Taiwanでの彼女の任務は、組織のブランド価値と理念を広めることだ。メディアとの連絡の他、SNS運営やビジュアルデザインも指揮する。ビジュアルイメージを統合してブランドとしての統一したトーンを打ち出す。
DFCはインドのリバーサイドスクールを起源とする国際的な教育NPOで、感じる、考える、動く、共有するの4ステップを通して子供たちに暮らしの中の問題を解決させるというものだ。その過程で思いやりや自信、創造力、行動力も育んでいく。さらにチャレンジコンクールを実施して子供たちに4つのステップを生活に応用させ、教員にも系統立ったサポートを提供し、討論を通してよりふさわしい教育方法を見出していく。
コロナ禍の中、チャレンジコンクールの成果発表会がオンラインで行われ、かえって多くの人がDFCの精神に触れることとなった。小学生がカメラに向かって、問題を解決する計画や実践方法を理路整然と語り、黄鈺雯は「子供たちは本当に輝いている!」と興奮した。
DFCのこの活動に参加した学校は、さらに進んで前回の成果を検討し、新たな方向を打ち出す。例えば花蓮の宜昌小学校は、海洋環境保全のテーマで、前回のビーチクリーン活動の成果が限られていたため、次回は地域社会も巻き込もうとしている。こうして活動は地域にも広がり、環境にもプラスの効果をもたらしている。
黄鈺雯は、こうして自分の方法で世界に影響を及ぼしつつある。青年大使に選ばれたことに、彼女は感謝しつつこう語る。「私たちは特別優れた人というのではなく、問題を見出し、声を上げようとする人なのです」と。
黄鈺雯(右から2人目)は2019年に米国在台協会(AIT)高雄事務所でインターンを務めた。これは当時のマシュー・オコーナー所長との記念写真。
2019年、台南で行なわれたLGBTプライドパレードに参加した黄鈺雯。
黄鈺雯は、誰でも行動を通して世界を変えられると信じている。