深山幽谷から生活の中へ
成功大学ラン研究センターでは、バイオ技術を用いてラン産業の価値創出を進め、観賞以外に香りなどを利用したランの商品化を試み、これを日常生活に取り入れようとしている。
陳虹樺は香りに関する重要な遺伝子を特定し、台湾とアメリカで8項目の特許を取得していると言う。そのうち2特許の香りに関する技術を民間に移転し、製品化を進めているそうである。
その一つはマレーシア原産のファレノプシス・べリーナで、これを台湾に持ち込み交配により香り高い新品種を開発した。成功大学ラン研究センターはこれを蘭卉生技公司に技術移転し、べリーナの胚の幹細胞を化粧品に使っている。さらにべリーナの香りから香油や香水、石鹸などの製品化も行われている。
製品化への応用は香水や香油に限らず、チョコレートやクッキー、お茶、パスタなど食品に取り入れる計画も進んでいる。
「ランを生活に取り入れることで、人との間により密接な関係を築けます」と、陳虹樺は言う。実験室での研究や、各地で毎年開かれるランの見本市などに限らず、様々な方法や形でランを一般に紹介し、理解を深め、生活の中に取り込んでいきたいと考えているのである。
世界に目を向けると、台湾のコチョウランは大きな特色を具えている。台湾のコチョウランの花言葉は「幸福」と言うが、モンキー・フェイスやビー・オーキッド、ヒスイランも、花の形は丸くはなく、台湾コチョウランだけが丸い花の形をしていて、しかも輸送に耐え日持ちがする。
2002年から今日まで、台湾のランの売上は毎年20%の成長を続け、リーマンショックの2008年でも落ち込むことはなかった。不景気な時こそ、人は幸福を求めるのだろうと陳虹樺は言う。
「信じていれば、幸福は目の前にある」というのがコチョウランの花言葉である。それはまた、台湾のラン産業の未来への期待でもある。
成功大学ラン研究開発センターの陳虹樺主任の指導を受ける博士課程の許家斉。2号遺伝子を持つバクテリウムを花弁に注射すると、4〜5日後には薄紅色の模様が現れる。
成功大学ラン研究開発センターの陳虹樺主任の指導を受ける博士課程の許家斉。2号遺伝子を持つバクテリウムを花弁に注射すると、4〜5日後には薄紅色の模様が現れる。
ファレノプシス・ベリーナの香りと胚の幹細胞は量産に成功し、技術移転して化粧品に用いられている。
美しいコチョウランは、我が国に外貨収入をもたらすとともに、さまざまな商品となって私たちの暮らしに入り込んでいる。