問題2:繁星医学部に面接なし?
医学生の人格は将来の医師としての行いに関わる。同情心と道徳感に富む良医の人材を発掘するにはどうするか。面接を行うべきか、どのように行うのか。繁星入学の論議が集まる。
社会正義伸張の意味において根本の疑問は、面接が階級の流動を促進するのか、それとも烙印を押すだけなのかである。
教育資源の地域格差から、都市部の高校は強い指導陣に恵まれ、僻地の生徒は筆記試験では都市部の生徒にかなわない。特技の才能育成や理数・言語等の学科競技のパフォーマンスならなおのこと太刀打ちできない。
一般に、裕福な家庭の生徒は口頭試験による推薦入試に強く、親の社会的経済的地位が有利に働いたり、審査書類を美化できる。一方経済的弱者の生徒は応対が不得手で、面接は明らかに不利だ。繁星制度に面接を設けない意図もここにある。だが医療教育界は異論を唱える。
「医学部の繁星枠は、もっと地域格差縮小の理想であるべき」台湾医学生聯合会元医学教育部部長、台湾大医学部の学生・劉玠暘は、学部ウェブニュースに発表した「光害のない所でしか星々は見えない」と題した文章で強調する。
医学部は繁星の学生に「地域格差を乗り越え、自己の発現や里帰りで僻地の医療資源不足改善に貢献すること」を期待すべきだと劉玠暘はいう。
つまり、医学部の繁星は僻地から来て、学んだことを郷里に還元する。劉玠暘は、面接や推薦状などの「非成績」要素で見極めない現状では、繁星で医学部に入る学生の多くが「星(僻地出身者)」でなく「ネオンサイン(都市部出身者)」かもしれないと劉玠暘は憂慮する。
口頭試験や面接は、海外の医学部では募集の標準手続きになっている。面接官の質問は、正解はないが価値観と倫理的判断に関わる。受験者の人格を見るためである。「結婚前のエイズ検査を立法で強制することに賛成ですか?」「患者に拒否されたらどう対応しますか?」などと質問される。
今年2月に米国で病没した成功大学医学部初代学部長・黄崑巌は、教育部医教会常務委員の任にあるとき『医学教育白書』を発表し、医学部の全数面接は医療教育界において既に共通認識であるとしている。また、台湾の医学生のほぼ5割が、自らの意志でなく親の期待に沿って医療を学んでおり、少なからず心理面と学業で適応しきれていないが「面接はこうした誰のために勉強するのか分からない学生をふるい出すのに役立つ」と指摘する。
白書では米国を例に、メディカルスクールは大学卒業後の専門職課程であり、入学許可は90%が面接に頼っているという。「米国と違いわが国の医学生は若いが、それでも面接は筆記試験より識別力がある」
台湾大医学部内科教授で元医学部主任の黄天祥は「医学生を選考するには」の文中、台湾大医学部は精神科医、内外科教授を含む百名近い面接官を育成しており、受験生が科学的分析力、論理的思考力、革新性、リーダーシップ、コミュニケーション表現力、そして他者を思いやる人格を持ち合わせているか評価できるといっている。
黄天祥は、国内医学部の面接は1名当り30分しか配分されないが、米国のように丸一日でなくても適性の選考には役立つという。かつて数学オリンピックで金メダルを受賞し、台湾大医学部に推薦入学した学生が、志が医学にないことに気づき、適応できずに辛い思いをした。「医学部はマルチ人間教育だから、特定の科目にしか興味がないなら、考え直したほうがいい」と言う。
繁星は個人申請と同じく推薦入学に属し、どちらも学測成績と在校成績を見るが、繁星だけ面接を行わないのは不公平であると黄天祥は考えている。
台湾大学医学部は今年初めて「繁星」制度の枠を設けたが、これが一般入試枠を圧迫する、不公平だという声も上がった。右の写真は台湾大学病院の一角。