処方として
西洋医学の観点も同じだ。
自律神経失調症が専門の郭医師によると、自律神経は人体の90%以上の器官を制御する。胃腸の蠕動、血圧、体温、筋肉を緩めるなどは意識による制御ができず、呼吸でなければ効果的な調節ができない。
「呼吸は心拍にさえ影響を与えるのです」吸気は交感神経を刺激して活発にし、興奮や感情の高まりを感じさせる。呼気は逆にリラックスさせ、喜びや平和な感覚を生む。だから意識的に呼吸のリズムと深さを変えれば、自律神経を調節し神経系統の平衡が達成できるのだ。
「正しい呼吸は無料で便利且つ効果的な処方」と郭はいう。ヨガを練習してきれいなポーズが作れても、呼吸を変えなければ自律神経は調節できない。
正しい呼吸を身につけ自分に合う速度を見つければ、自律神経を強化できると郭は強調する。この理論を臨床に運用し、患者に効果が得られている。
最も印象に残るのが、50代の企業経営者だ。始終急診にかかっていた。いつでも心臓発作に襲われる恐怖から、飛行機や新幹線に乗れなくなり、病院から車で20分以上離れた所へ行けなくなり、しまいには家でしか仕事ができなくなった。抗不安薬の服用に加えて腹式呼吸の練習を行ったところ、2ヶ月で顕著な改善が見られた。2ヶ月でよくなるなんて、5年間無駄に苦しい思いをしたと、経営者は喜びながら悔しがる。
もう一人は60代の女性で身長150cm体重80kgの肥満だった。腹式呼吸で6ヶ月で20kgを減量し、心臓と膝の負担も減り歩行器も不要になった。
深い呼吸で痩せるというのは本当だろうか。郭の説明によると、多くの自律神経失調症の患者は食べることで不安を解消する。食べると胃腸を蠕動させ働かせようと副交感神経が刺激され、それによりリラックスもするが、体重増加にも繋がる。体重が増えれば自信をなくし行動力にも影響し、患者はさらに落ち込んで食べる。心理面に関係する悪循環は減量薬では改善できないが、「呼吸」という心身精神のあらゆる面をカバーする方法なら、根本を改善する効果がある。
インドのグルジが編み出した「浄化呼吸」は呼吸の頻度とエネルギーの共振を重んじる。妊婦や心臓血管疾病、緑内障のある人にはふさわしくなく、中途半端な知識で人に教えることは禁じられている。