安全のアップグレード
永清祥牧場の努力は、台湾畜産業アップグレードの縮図でもある。
『2001年台湾養豚統計ハンドブック』によると、台湾人は年平均76キロの肉類を消費しており、うち豚肉が37キロ、家禽が33キロで、牛肉は5キロを下回る。最大の豚肉では、品質味共によい国産ブランド豚は数十種に上るが、生産量は豚肉市場全体から見ると5%足らずと市場規模は小さい。
認証取得のブランド肉は値段が高すぎ、有名ブランド化して庶民には手が出ないという人もいる。それでも安全、味、質が揃うには代価が必要だ。
台湾動物科技術研究所の副研究員で、台湾農業標準学会の廖震元事務長によると、台湾の牧畜業はかつて口蹄疫で輸出に打撃を受け、さらにWTO加盟で輸入の低価格競争に巻き込まれたため、ここ十数年、安全や防疫などの改革を進めてきたという。
「現在の畜産品の残留薬品リスクは、植物性食品より低いのです」と廖震元は言う。畜産品は処理、カットなどの工程を取るが、処理工場は獣医の検査や残留薬品検査を受けないと出荷できないので、安全に対して基本的な保障がある。
しかし、農政部門の残留薬品規定は最低基準に過ぎず、検査技術にも限りがあり、サンプルが合格しても全体が合格とは限らない。検査項目に限りがあるため、悪質な商品は防ぎようがなく、本当に厳しく安全を管理するには、川上から川下まで通した安全管理システムが必要と言う。
廖震元は台湾安全農法、ISO22000またはHACCPなどの認証があるものを薦める。後の二つは国際的に厳格に施行され信用力があり、前者は台湾農業標準学会が定めたもので、産地表示を特徴とする。政府は積極的に生産履歴、CAS認証を推進するが、これは基本条件に過ぎず、これに安全管理システムの認証を加える必要がある。
では、一般の人が関心を持つ有機食品は、100%安心といえるのだろうか。
廖震元によると、有機生産の基本は環境保護と自然回帰だが、台湾は狭い土地に人口が多く、有機飼料の量産は難しい一方、輸入品は高いため、現段階での有機畜産は経済的に難しい。「安全管理による生産モデルで、有機農法の95%の安全性を確保でき、しかもコストはずっと安いのです」と語る。
新北市の板農活力スーパーでは、生産履歴があり、安全が保証された食肉のコーナーを設けている。品揃えも豊富だ。